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「冬冬の夏休み」 懐かしい田園風景とひと夏の体験

名画を見る8月その18。今回は、ホウ・シャオシェン:侯孝賢監督の、冬冬の夏休み。キネ旬ベストテンで第4位でした。映画祭としては、ナント三大陸映画祭でグランプリなどいくつかの受賞があります。1984年の映画です。
原題:冬冬的假期
英題:A Summer at Grandpa's


あらすじ
小学校を卒業したトントン:冬冬(ワン・チークァン:王啓光)は、妹のティンティン:婷婷(リー・ジュジェン:李淑楨)と、入院している母を見舞った後、叔父(チェン・ボーチョン:陳博正)に連れられ、母方の祖父(グー・ジュン:古軍)がいる銅羅に夏休みを過ごしに行きました。この物語は、冬冬が祖父の家で過ごした夏休みの出来事です。

自宅で医者をしている祖父の家に着くと、さっそく村の男の子たちと、川遊びに出かけます。みんな裸で川遊びですが、一緒に行った婷婷は仲間に入れず、機嫌を損ねて、男の子たちの服を全部川に流してしまい、みんな裸で家に帰る羽目になりました。ある日、冬冬たちが木登りしている時、精神に障害を持つ女性、ハンズ:寒子(ヤン・リーイン:楊麗音)に出会います。そして、昆虫採集に出掛けた時に、強盗の犯行現場を目撃してしまいました、ある日、叔父が恋人(リン・シウリン:林秀玲)を妊娠させたことが発覚。祖父は怒って叔父を勘当し、叔父は恋人と二人で住み始めます。そして、男の子たちから仲間はずれにされた婷婷は、あわや列車に轢かれるというころを、寒子に助けられ、婷婷は寒子を慕うようになっていきました。その頃寒子は、雀捕りの男に妊娠させられ、村の人々は子供を生むことに反対しますが、寒子の父親は子供を産めば変わるかもしれないと不憫に思い、産ませたがっていました。

叔父と恋人はひっそりと結婚し、新居に住んでいました。冬冬は二人の住まいを訪ねたところ、強盗犯人が匿われていました。叔父は古い友達を見捨てる訳にいかないと、匿っていたのですが、冬冬は祖父にこのことを知らせ、祖父の通報によって叔父も警察に捕まってしまいます。祭りの日、台北で入院中の母の容態が悪いと知らせが届きます。祖父母はすぐに台北に出かけようとしましたが、寒子は婷婷が拾った死んだ小鳥を巣に戻そうとして木から落ち、祖父が処置しましたが、流産してしまいます。祖父は寒子の父に今後を考え避妊手術を進めますが、寒子の父は受け入れません。翌日になって、母の容態も回復したという知らせも入り、祖父は勘当していた叔父を許した頃は、もう夏休みも終わりの日。冬冬と婷婷は皆に別れを告げて、台北に帰っていくのでした。



冬冬の夏休み

台湾の小学校の卒業式から始まる物語。台湾は9月新学期で、卒業式のあと夏休みのようです。「仰げば尊し」の流れる卒業式から、母の病室を経て、田舎へ向かう四人。そして、田舎の古い家に着き、野原に出たところで、この雰囲気もプロットも婷婷の雰囲気も、「となりのトトロ」そのものだと思いました。祖父の家は古い日本家屋との事ですが、日本・台湾・西洋風折衷のようにも感じます。大きな家で、これもトトロの雰囲気です。さて、物語は、婷婷の男の子の服をみんな川に流してしまうという、突然のぶっ飛んだ行動によって波乱の幕を開けました。

物語の中で、印象的だったエピソードの一つは、寒子に関するエピソード。当時は日本では優生保護法があり、強制断種が認められていた時代でした。祖父はいわば厳格な人格者ではありますが、古い考えの人。それに対する寒子の父の思いが噴出する場面が強い印象を残しました。この映画に出てくる台湾の村の人々はとても天真爛漫に見えますが、それでも社会の中で生きています。でも、寒子の場合、それらを超越した位置にいます。顔が隠れていて見えないことが多いのですが、流産の後意識が戻った時のアップの顔は神々しい美人だったのが印象的でした。

さて、メインのお話は、冬冬のひと夏の体験です。中学校の入学を前にしての祖父の家で、いろんな事件に出会い、大きく成長していく話だと思います。帰る時は、来た時と何か変わっているはずですね。婷婷が列車に惹かれそうになるのは、ちょっとトラウマになりそうな体験ですが、それ以外はいろんな社会を知り、大人の考え方を知りという事で、この体験を活かして、また中学校で成長していくのではないでしょうか。そして、台湾の田舎の風景は大変親近感の持てる風景で、曲も最後は「赤とんぼ」ですし、懐かしさがいっぱいの映画でした。

2020.8.19 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞
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「黒衣の刺客」 唐代安史の乱後の混乱を背景とした女剣士の物語

キネ旬ベスト10を見るシリーズです。今回は、2015年外国映画第5位の「黒衣の刺客」にしました。久しぶりに見るアジアの映画です。劇場公開時にも見ることを考えたこともありましたが、ちょっと優先順位が低かった。中国の史劇はあまり得意分野ではないので…。2015年台湾・中国・香港・フランス共同制作の、ホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の映画で、カンヌでは監督賞を受賞しました。

あらすじ
唐代の中国が舞台。姉の道士・嘉信(シュー・ファンイー:許芳宜)の元に預けられ、刺客として修行を積んだ聶隠娘(スー・チー:舒淇)が、かつての許婚者であり、今は地方の権力者となった田季安(チャン・チェン:張震)を倒す任務を帯びて帰ってきた。しかし任務中、彼女は敵対する勢力から、出会った鏡磨きの青年(妻夫木聡)とともに、父の聶鋒(ニー・ダーホン:倪大宏)や田季安を助けることになる。そして、彼女に暗殺を命じた姉の道士と再び対峙することになるが…。



まずは、白黒の映像で隠娘の修行から、姉の嘉信に田季安を暗殺するよう命を受けるまでが描かれます。そして、節度使の田季安や、家族のいる魏博に戻ってきました。ここからカラー映像。

ある夜、田季安の館に何者かが忍びこみ、それが隠娘だと知った田季安は、暗殺の前に挨拶に来たのだと悟りました。かつて、朝廷から嫁いできて、田季安の養母となった嘉誠公主(許芳宜・二役)は、隠娘と田季安を婚約させましたが、田家と元家の同盟の必要性から破棄され、隠娘の身を守る為、嘉信に彼女を預けたのでした。ある日、隠娘の伯父田興(雷鎮語)が、朝廷寄りの発言をしたことで怒りを買い左遷されることになると、隠娘の父・聶鋒が護送を担当します。道中、元家が送りこんだ刺客たちに襲われますが、通りかかった鏡磨きの青年と、駆け付けた隠娘に助けられました。

隠娘はその後、仮面の女刺客・精精兒(チョウ・ユン:周韻)に襲われ傷を負い、後を追ってきた鏡磨きの青年の治療を受けます。青年は日本から遣唐使としてやってきましたが、今は鏡磨きをしながら旅をしていました。田季安の館では、田季安の妾である瑚姫(謝欣穎)が、廊下で倒れ込み、そこに忍び入っていた隠娘は、呪術に苦しむ瑚姫を救います。彼女は、慌てて駆けつけた田季安に瑚姫の妊娠を告げ、田季安は正妻の田元氏(周韻・二役)が呪術師を雇い、瑚姫を苦しめようとしたのだと知ります。呪術師は射殺され、田季安は田元氏をも斬り捨てようとしますが、とっさに母をかばう息子を前にして思いとどまりました。

嘉信の元に帰った隠娘は、田季安暗殺の命令を遂行できなかったと話します。嘉信は暗殺者としての技術は完成しながらも情を捨てられなかったのだと叱り、隠娘と一戦を交えますが、隠娘の剣術の腕前はすでに嘉信と互角になっていました。隠娘は剣を収め、新羅へ向かう鏡磨きの青年と合流し、いつも変わらぬ山々の中、草原の彼方へと去っていきました。

黒衣の刺客

まずは、見てもなかなかストーリーが頭に入ってこないという映画でした。そこで、時代背景を確認すると、こんな感じです。
唐代の安史の乱の後、その根拠地であった河朔三鎮は、最終的に反乱軍の武将たちを節度使として登用しました。彼らは、中央政権の威を借りつつも、半ば独立国的な運営を行っていきます。朝廷との関係、北方を接する契丹との関係等、複雑な情勢の中で、周囲とのバランスを取りながら統治をおこなっているという状態でした。その河朔三鎮の一つが魏博で、渤海湾岸から黄河北岸の一帯。今でいう河北省東部に該当するエリアです。

そんな中でのストーリーなんですが、登場人物の多様性やメイクの関係もあり、一人二役もありで、それぞれを理解に至るまでがまた難しい。やはり、中国の史劇になれてないとこうなります。で、最後まで見てみれば、まぁ背景が判れば、話の筋はそれほど難しくはありませんでした。冒頭のさわりは白黒で、その後はカラー、回想シーンはワイドと使い分けられています。館の中は、ちょっと紗がかかったような映像もありますが、外の自然の中の風景はクリアでなかなか綺麗です。そして、物語は余計なセリフななく、映像で語るスタイルです。このあたり、通俗的な話をベースにした映像表現であれば、話を追う必要がないのでいいのですが、私はさすがにこのあたりの歴史は疎いのでなかなか見るのがつらいのです。2回目はきっといいと思います。

さて、感想ですが、まず隠娘は、孤高の女剣士という雰囲気で、なかなかかっこよく描かれています。また、鏡磨きの青年の回想としての、日本の映像がありましたが、これはちょっと違和感がありやはり不要では?日本向けのサービス映像かも知れませんが。また、後半に出てくる女性たちの舞踊は中東系の踊りを思わせますが、河朔三鎮の節度使は、基本突厥や契丹系のテュルク系が出自だったらしいので、その流れを引くものかと思いました。そういう事なので、物語を知っていれば、目は芸術面に向かう事ができ、映像やアートの雰囲気をじっくり味わうことが出来るのではないかと思います。一度さっと見て終わりにするには、なんとも解りづらい映画だと思いました。

2018.7.22 HCMC 自宅にて Huluからパソコン鑑賞

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プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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