
「冬冬の夏休み」 懐かしい田園風景とひと夏の体験

原題:冬冬的假期
英題:A Summer at Grandpa's
あらすじ
小学校を卒業したトントン:冬冬(ワン・チークァン:王啓光)は、妹のティンティン:婷婷(リー・ジュジェン:李淑楨)と、入院している母を見舞った後、叔父(チェン・ボーチョン:陳博正)に連れられ、母方の祖父(グー・ジュン:古軍)がいる銅羅に夏休みを過ごしに行きました。この物語は、冬冬が祖父の家で過ごした夏休みの出来事です。
自宅で医者をしている祖父の家に着くと、さっそく村の男の子たちと、川遊びに出かけます。みんな裸で川遊びですが、一緒に行った婷婷は仲間に入れず、機嫌を損ねて、男の子たちの服を全部川に流してしまい、みんな裸で家に帰る羽目になりました。ある日、冬冬たちが木登りしている時、精神に障害を持つ女性、ハンズ:寒子(ヤン・リーイン:楊麗音)に出会います。そして、昆虫採集に出掛けた時に、強盗の犯行現場を目撃してしまいました、ある日、叔父が恋人(リン・シウリン:林秀玲)を妊娠させたことが発覚。祖父は怒って叔父を勘当し、叔父は恋人と二人で住み始めます。そして、男の子たちから仲間はずれにされた婷婷は、あわや列車に轢かれるというころを、寒子に助けられ、婷婷は寒子を慕うようになっていきました。その頃寒子は、雀捕りの男に妊娠させられ、村の人々は子供を生むことに反対しますが、寒子の父親は子供を産めば変わるかもしれないと不憫に思い、産ませたがっていました。
叔父と恋人はひっそりと結婚し、新居に住んでいました。冬冬は二人の住まいを訪ねたところ、強盗犯人が匿われていました。叔父は古い友達を見捨てる訳にいかないと、匿っていたのですが、冬冬は祖父にこのことを知らせ、祖父の通報によって叔父も警察に捕まってしまいます。祭りの日、台北で入院中の母の容態が悪いと知らせが届きます。祖父母はすぐに台北に出かけようとしましたが、寒子は婷婷が拾った死んだ小鳥を巣に戻そうとして木から落ち、祖父が処置しましたが、流産してしまいます。祖父は寒子の父に今後を考え避妊手術を進めますが、寒子の父は受け入れません。翌日になって、母の容態も回復したという知らせも入り、祖父は勘当していた叔父を許した頃は、もう夏休みも終わりの日。冬冬と婷婷は皆に別れを告げて、台北に帰っていくのでした。

台湾の小学校の卒業式から始まる物語。台湾は9月新学期で、卒業式のあと夏休みのようです。「仰げば尊し」の流れる卒業式から、母の病室を経て、田舎へ向かう四人。そして、田舎の古い家に着き、野原に出たところで、この雰囲気もプロットも婷婷の雰囲気も、「となりのトトロ」そのものだと思いました。祖父の家は古い日本家屋との事ですが、日本・台湾・西洋風折衷のようにも感じます。大きな家で、これもトトロの雰囲気です。さて、物語は、婷婷の男の子の服をみんな川に流してしまうという、突然のぶっ飛んだ行動によって波乱の幕を開けました。
物語の中で、印象的だったエピソードの一つは、寒子に関するエピソード。当時は日本では優生保護法があり、強制断種が認められていた時代でした。祖父はいわば厳格な人格者ではありますが、古い考えの人。それに対する寒子の父の思いが噴出する場面が強い印象を残しました。この映画に出てくる台湾の村の人々はとても天真爛漫に見えますが、それでも社会の中で生きています。でも、寒子の場合、それらを超越した位置にいます。顔が隠れていて見えないことが多いのですが、流産の後意識が戻った時のアップの顔は神々しい美人だったのが印象的でした。
さて、メインのお話は、冬冬のひと夏の体験です。中学校の入学を前にしての祖父の家で、いろんな事件に出会い、大きく成長していく話だと思います。帰る時は、来た時と何か変わっているはずですね。婷婷が列車に惹かれそうになるのは、ちょっとトラウマになりそうな体験ですが、それ以外はいろんな社会を知り、大人の考え方を知りという事で、この体験を活かして、また中学校で成長していくのではないでしょうか。そして、台湾の田舎の風景は大変親近感の持てる風景で、曲も最後は「赤とんぼ」ですし、懐かしさがいっぱいの映画でした。
2020.8.19 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞