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「もうひとりの息子」 子供の取り違えから生まれた新たな絆

Gyao!の、キネ旬ベストテン作品特集からの鑑賞です。今回は、「もうひとりの息子」。2012年の映画で、監督はロレーヌ・レヴィ。キネ旬10位でした。東京国際映画祭の東京グランプリ及び監督賞受賞作品です。
原題:Le fils de l'autre (2012)

あらすじ
ヨセフ(ジュール・シトリュク)は、テルアビブに住むユダヤ人のシルバーグ家の息子で、軍人の父アロン(パスカル・エルベ)と、母オリット(エマニュエル・ドゥヴォス)、妹の4人家族。ある日、兵役の検査で両親との血液型の不一致が判明し、湾岸戦争で混乱する病院で取り違えられたことが判明。相手は、パレスチナ人一家のアル・ベザス家の次男のヤシン(マハディ・ザハビ)でした。ヤシンは、父のサイード(ハリファ・ナトゥール)、母のライラ(アリーン・オマリ)、長男ビラル(マフムード・シャラビ)、妹アミナの5人家族。サイードは、隠し通すつもりでしたが、その後、ヨセフには兵役取り止めの通知が届き、医大に合格してフランスから帰国したヤシンも、事実を知ることになり、二人は悲しみ悩むこととなります。

オリットの招待で、アル・ベザス家はシルバーグ家を訪問しました。ヨセフとヤシンは打ち解けますが、父親達は民族問題でいがみ合ってしまいます。ヤシンの兄のビラルもユダヤ人に激しい憎しみを持っており、ヤシンを敵と罵るようになっていきます。やがてヤシンは、アロンの手配で通行証を手に入れ、ヨセフのビーチでのバイトを手伝うようになり、商売上手なヤシンのおかげで売り上げが上がっていきました。しかし、ビラルの攻撃はますます激しくなっていきました。そして、ヨセフとヤシンは、同じ思いを持ち、自分たちを、アブラハムの2人の子、イサクとイシュマエルに例えるようになっていきます。

ある日、偶然オリットとヤシンが再開し、オリットは思わず実子のヤシンを抱き寄せます。ヨセフも一人でパレスチナのアル・ベザス家に向かい、辿り着くとライラは笑顔で迎え、精一杯もてなしました。気まずい雰囲気の中で、ヨセフは意を決して歌い出すと、その場が和み、家族みんなに歌が広がっていきました。夜、シルバーグ夫妻が迎えに訪れ、子供たちの交流の中で、親や兄弟たちも徐々に打ち解けていきます。ある夜、ビラルもテルアビブへの通行証を手に入れると、ヤシンとヨセフの3人で街を歩いていました。ところが、ならず者に絡まれ、ヨセフがナイフで刺されてしまいます。そして、病院に担ぎ込まれ治療を終えると、3人はこれからの未来に向けて新たな絆を確かめ合ったのでした。



もうひとりの息子

赤ちゃんの取り違えが、成人の頃発覚してしまうお話。その家族が、イスラエルのユダヤ人家族と、パレスチナ人家族。話は双方の複雑な立場から、混沌とした展開となっていきます。映画の印象としては厳しい話のわりに、意外とあっさりしていて、あまり深刻になっていかないような気がします。それだけに、問題点を端的に表現していると思いました。ユダヤ人家族の妹が初めて聞いた時の、「お兄さん、返すの?」というのには、正直笑ってしまいました。ストレートなんですね。むしろストレートさがいい感じです。

社会や宗教の硬直性も表現されて、深刻な問題や現状の矛盾点も十分表現されています。そして何より、父と母と子供たちは、それぞれが慣れ親しんでいく過程がだいぶ違うように描かれているところに、興味深く感じました。母親たちは同化が早く、交流へと導こうとしています。子供たちは同年代の仲間として慣れ親しんでいく形です。問題は父親たちで、なかなか適応できず、交流の進んだ家族たちに後押しされて、初めて歩み寄っていく形でした。最後は若い三人で未来志向で終わるところは、将来への希望が描かれていて良かったと思いました。

映画で描きたかったと思われること。対立からは幸福な未来は生まれず、今回は偶然のきっかけがもたらした両者の交流が、一つでも二つでも増えていくことが、両者の平和的な共存に向けての解決に繋がっていくということ。そのような現実の平和が訪れることを祈るばかりです。いろいろな問題を織り込んで、明解かつ端的に纏められたいい作品だと思いました。

2021.2.13 HCMC自宅にてGyao!よりのパソコン鑑賞
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「サマーフィーリング」 三つの都市を巡る喪失と愛の行方

Amazonの新着の中で目についた作品。ジャケットの海の青が目を引きます。そんな眩しそうなフランス映画だったので、さっそく見てみました。2015年の映画で、フランス・ドイツ合作。監督は、ミカエル・アースです。
原題:Ce sentiment de l'été (2015)


あらすじ
ベルリンの夏、サシャ(ステファニー・デール)は、恋人のロレンス(アンデルシュ・ダニエルセン・リー)を部屋に残して仕事に向かい、帰宅途中に突然倒れて亡くなってしまいます。フランスからサシャの両親と妹のゾエ(ジュディット・シュムラ)が駆け付け、誰もが受け入れる事が出来ないでいる中で、ロレンスもゾエや友人たちに励まされ、日常に戻ろうとしますが、何をしてもサシャが頭から離れませんでした。一方、ゾエもパリに戻りますが悲しみが襲い、夫とも関係も上手くいかず、別居してしまいます。

一年後パリ。ロレンスはゾエに会いにやってきます。ロレンスは翻訳の仕事をしながら、小説家を目指していました。悲しみを乗り越えられないロレンスは、同じ思いを共有できるゾエと会ううちに、二人の距離は少しずつ縮まっていきます。更に一年後ニューヨーク。ローレンスは姉の住むニューヨークに移り住み、新しい生活がロレンスを癒して、小説にも取り組み始めていました。そして、イーダ(ドゥニア・シショフ)という女性とも出会い、親しくなっていきます。

ある日、ゾエがニューヨークを訪ねてきました。ゾエはついに離婚し、昔の男友達の住むテネシーへと旅行に向かう途中で、ロレンスに会いに立ち寄ったのでした。ゾエはパーティーに誘われ、ロレンスとイーダの仲のよさそうな様子を見て、一人でホテルに戻ると泣き崩れてしまいます。そしてロレンスに見送られ、笑って旅立って行きました。ロレンスはイーダと海にやってきました。ロレンスは美しい砂浜で戯れるイーダを、眩しそうに見つめるのでした。



サマーフィーリング



まずは、印象として、どこを切り取っても美しい映像で、素晴らしいセンスだと思いました。映像の美しい映画は、それだけで満足で、ハードディスクに保存しておいて、適当な部分を眺めているというのにも向くのかなと、そんな気になる映画でした。今の私には、そんな映画は「パリテキサス」で、部分という事であれば、人生で一番繰り返して見た映画かもしれません(笑)。その映像の中で、ジュディット・シュムラの透き通ったような雰囲気が映えています。最近MyFFFでバーニング・ゴーストを見たばかり。ちょっと気に入っていましたが、続けて見てだいぶ気に入りました。いい雰囲気です。

恋人のサシャの死から、舞台をベルリン、パリ、ニューヨークと移しながら、その時間の流れの中で変わっていく心境の変化。喪失感から抜け出せないロレンスと、夫婦の問題にも発展したゾエは、お互いを心の拠り所にしているようです。その微妙な関係性もあっての距離感が面白く、またその距離感があって癒されている部分もあったような気がします。ゾエは取り残され、一人で部屋に帰って泣き崩れるところに、寂しさが残りました。お互いの状況もあって、少しすれ違い気味の二人だったのですが、プロットも上手くできていて、心に染み入る瞬間です。

この映画には、多かれ少なかれ悩みを持った様々な登場人物が出てきました。しかし、どの登場人物もすべてカッコよく見えます。大変スタイリッシュともいえます。嫌な面やマイナス面を見せていません。この雰囲気、見ながらなんとなくバブルの時代を思い出していました。あの頃のミニシアターにぴったり合いそうですし、あの頃の街の雰囲気にも会いそうです。他の作品は見ていないのですが、この雰囲気がミカエル・アース監督の特徴ということであれば、好きなタイプと思うので、他作品ももっと見てみたいと思いました。

2021.2.8 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「思春期 彼女たちの選択」 多感な10代の学校生活の成長記録

オンライン映画祭の「第11回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)」からの鑑賞です。2021.1.15-2.15の期間中は、各国から無料視聴できる形です。今回は、2019年の映画で、セバスチャン・リフシッツ監督の作品です。見ていて気づきましたがドキュメンタリー映画でした。
原題:Adolescentes (2019)

あらすじ
同じ中学に入学したアナイスとエマは親友同士。仲間たちと集まればクラスの男の子の噂話や、先生の陰口に花が咲きます。そして、家に帰れば、思春期らしく母親との会話はいつしか口論に発展します。エマは歌のレッスンを行いながらも、漫画家など芸術分野に魅力を感じていました。そして、友達のスケボーに興味を持ち、自分もやるようになります。アナイスは太りがちの体型で、母親から指摘されますが、親の指摘は気に入らない年ごろでなかなか素直に聞けません。そして、高校の進路希望の時期となり、エマは一般高校、アナイスは幼児指導を目指して職業高校を志望しました。

アナイスは彼ができましたが、電話で別れを告げられ落ち込みます。そして、学校ではインターンとして幼児教育や、老人介護をこなし、老人のケアにも興味を持つようになっていきます。ところが、祖母が亡くなり、その後、母が手術で入院し、弟や妹の世話もすべてアナイスが請け負う事となり、全く遊ぶ時間も無くなってしまいました。エマは演劇などに打ち込み、将来は映画の道に進みたいと思うようになりますが、自信が持てず悩みます。しかしその話を両親とすれば最終的にはいつも口論になってしまいます。そんな悩みの中で、二人は時々一緒に遊び、悩みを打ち明けていました。

やがて、アナイスの母親は退院して家にいるようになりますが、アナイスは家にうんざりして、許可を得て一人暮らしを始めます。しかし、いざ出発する日には、母親と涙ながらに抱き合います。やがて進路を決める時が来ます。アナは映画学科には合格しますが、いくつかの一般的な学科はことごとく補欠となってしまいます。志望通りなアナは満足ですが、いかにも不満そうな母親と再び口論となります。そして、進路は決まったものの、問題は卒業の単位。それぞれの発表では、二人とも合格が決まり喜び合いました。そして、アナはパリの大学に行くことになり、母親に駅まで送ってもらい抱擁を交わすと旅立っていくのでした。



思春期 彼女たちの選択

中学と高校の間の二人の少女の成長を追ったドキュメンタリーでした。家庭環境も、性格も違う二人ですが、大の親友。入学から卒業までの間に描かれる学校行事や、親子関係、家庭内や友達との出来事などが、2時間に凝縮されて描かれます。撮影は実際の成長に合わせて行ったと思われますので、その思春期の歳月が凝縮されている格好になっているのが面白いところです。家庭の環境に左右されながらも、しっかり者のアナイスと、比較的裕福そうな家庭の中で、親とは常に対立しつつ、自身の将来にも悩むエマの二人の思春期の6年間です。

顕著に描かれているのは、家族関係だと思います。特に母親との関係や確執。かなり凄まじいバトルが展開されています。そして、最初は黒かった母親の髪の毛が、映画が終わるころにはすっかり変わっているところに、6年の歳月を感じます。そして、いくら議論しても、子供は子供。巣立つときの別れに寂しさが漂います。映画には、この6年間におけるテロや大統領交代などの時事的なイベントを間に挟みますが、背景の年代を示す意義はあるものの、それほど二人に影響はしていないと思いました。やはり、母親が一番で、その次に友達、そしてその他の家族や学校が深くかかわっていると感じました。父親は女の子には無力です。

フランスの学校の評価は20点満点で行なわれるとか、いろいろ新しい発見もありました。また、イベント毎に撮り続けたのだと思いますが、6年間の蓄積にはやはり迫力を感じました。とはいっても、2時間15分の間、さしてテーマを示唆されず、2人とその周辺の6年間を見せられることになりますので、ドキュメンタリーという迫力はあるものの、こういった構成ではいささか焦点が定まらず、冗長に感じたのも事実でした。また、今回は図らずも、普段あまり見ないドキュメンタリー映画を見ることができたのは良かったと思います。

これで、MyFFFの実写の長編コンペティション作品は全部見ました。あとは、短編とアニメと非コンペティションですが、あとは気が向いたら気軽に見ることにしましょう。ひとまず目標達成です。また来年…

2021.2.7 HCMC自宅にてMyFFFサイトよりパソコン鑑賞

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「髪結いの亭主」 永遠に続く愛と幸福の絶頂

キネ旬ベストテンが発表されましたが、これにちなんでGyao!にて、過去のキネ旬ベストテン作品特集が組まれていました。全部で45本ありますが、半分までは見ていないようので、この機会に見て見ようと思います。まずは、「髪結いの亭主」。1990年の映画で、監督はパトリス・ルコント。キネ旬6位でした。
原題:Le mari de la coiffeuse (1990)

あらすじ
アントワーヌは、少年時代(ヘンリー・ホッキング)に理髪師のシェーファー夫人(アンヌ=マリー・ピザニ)に魅かれ、頻繁に店に通っていました。そして父親(ローラン・ベルタン)に将来は理髪師と結婚することと言ってしまい、張り倒されます。ある日、アントワーヌはシェーファー夫人が店の中で亡くなっているところに出会ってしまいます。そして、時は経ち、中年の域となったアントワーヌ(ジョン・ロシュフォール)は、一人で理髪店を切り盛りしているマチルド(アンナ・ガリエナ)に一目惚れしてしまい、一回目の来店でプロポーズそして、2回目でマチルドは承諾します。その条件は、「愛しているフリは絶対にしない」ということでした。

結婚式の出席は身内3人だけ。その後、助け合いながら毎日をずっとその小さな理髪店で過ごし、お互いは深い愛に結ばれました。実際、二人は子供も望まず、二人だけの愛の世界を過ごしていたのでした。そのような10年にわたる結婚生活の中で、一度だけ些細な喧嘩をした事があります。すぐに仲直りすると、二人はオーデコロンのカクテルを飲んで酔っ払い、朝まで店で過ごします。ある日、アントワーヌとマチルドは、老人ホームに入所した友人を訪問すると、友人は、老人ホームは死者の場所で、長居するところではないと早々に帰されました。

ある雷雨の夕方、マチルドは早めに店を閉め、積極的にアントワーヌを求めました。そして、買い物に行くと言って、傘を差さず雨の中に出ていくと、増水した川に飛び込んでしまいます。マチルドの遺書には、幸せの絶頂にあるうちに自ら命を絶つ、とありました。マチルドがいなくなった後も、アントワーヌは理髪店のソファに腰掛けて一日を過ごしていました。ある日、客が入ってくると、アントワーヌは洗髪をし、アントワーヌはいつもの踊りで客を喜ばせ、妻はもうすぐ戻ってくる、とだけつぶやいて、再びソファに腰かけ、クロスワードパズルに取り組むのでした。



髪結いの亭主

女性の理髪師と言えば、自分にも子供の頃の記憶があります。ある理髪店で一人だけ女性の理髪師がいて、その人に刈ってもらいたいと思っていたことや、何度目かの来店でその人にあたったこと。結果は何も変わりありませんでしたが…。ただそれだけなんですが、アントワーヌの気持ちは何となくわかります。やはり女性と直接触れる場面が生まれるので、ときめくものがありました。そしてそのまま大きくなったアントワーヌはついにマチルドを射止め、子供の時の思いを100%満たした幸せな生活を送り始めました。中盤は、そのアントワーヌ視線を意識したマチルドが美しく描かれます。

カメラは、マチルドの美しい肢体、そのすべてのパーツを舐めるように撮影しています。女性の美しさをじっくりと愛でる、この上ない耽美的な映像でした。アントワーヌの愛に満ちた目線が良く表現さています。そして、そのアントワーヌの心は子供の時のままのアントワーヌでもあります。しかし、時を経て、天井にひび割れができ、タバコを吸い始め、徐々に変化が訪れていきました。マチルドは幸せの絶頂をそのままに、アントワーヌの心に愛の絶頂を残したまま、命を絶ちます。アントワーヌの時間はそこで止まり、いつまでも最高のマチルドと過ごしているのでした。

幸せの最中にいると、その幸せをなくしてしまうのが恐ろしくなります。この映画で表現されているのはその様な絶頂と、そこで一気に時間を止めてしまったマチルドのお話。アントワーヌにはその絶頂の思い出だけが残されました。そのアントワーヌは子供の頃のときめきのままに、すべての時間を女性の理髪師の記憶と共に過ごしているのでした。人生の中の愛と幸福を切り取って、最大限に表現した映画。素晴らしい映像と構成だと思いました。

2021.2.4 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「奥様は妊娠中」 ピアニスト夫婦の妊娠出産騒動記

オンライン映画祭の「第11回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)」からの鑑賞です。2021.1.15-2.15の期間中は、各国から無料視聴できる形です。今回は、2019年の映画で、ソフィー・レトゥールヌール監督の作品です。
原題:Énorme (2019)

あらすじ
クレール(マリナ・フォイス)は世界中に演奏旅行をしている多忙な天才ピアニスト。夫でマネージャーのフレッド(ジョナタン・コーエン)が、彼女の総ての予定や雑事を取り仕切り、いつも二人で世界を駆け巡ります。そして、この生活を続けるために、子供は持たないと二人は決めていました。そんな中で、クレールは1年先にラヴェルの協奏曲のオファーを受け、ソロしか演奏しないという彼女に、フレッドはさっさとOKを出してしまいました。そしてある日、フレッドは飛行機で移動中に、緊急出産に立ち会う事になってしまい、その場で生まれてきた子供を見て、自分も欲しくてたまらなくなってしまいます。

フレッドは、友人のシャーマンの祈祷を頼みつつ、クレールのピルを甘味料にすり替え、セックスに励みます。そしてフレッドはクレールの妊娠を確信しますが、クレールには内緒で、堕胎が難しくなる時期を待ちました。やがて、クレールは体の張りやしこりが気になりはじめ、癌を疑い病院を訪れて、初めて妊娠を知りました。予定日はほぼ協奏曲のコンサートの日です。仕方なくクレールは練習を続け、代わりにフレッドが妊娠セラピーに通い、出産の用意を嬉々として整え始めました。それは、まるで自分や妊娠したような騒ぎで、甘いものを食べて体重も増していきました。

妊娠9ヶ月を迎え、クレールのお腹が大きくなると、コンサートのスケジュールも迫り早く出産しようと画策し始めます。そんな中でクレールはフレッドの友人のシャーマンから妊娠の秘密を聞いてしまい、二人は喧嘩し別居状態となりました。ふさぎ込むクレールはセラピストの問診を受けて持ち直し、フレッドは自分の行為が犯罪行為であると言われます。やがて陣痛が始まるようになり、フレッドも呼び寄せられて再び対面。二人は協力して無事出産。そしてコンサート会場に一人で駆け付けたクレールは演奏を始め、フレッドは生まれたばかりの赤ちゃんと共に、家でクレールのコンサートのテレビ中継を見るのでした。



奥様は妊娠中

楽しい、ファミリーコメディでした。避妊薬に細工をして妊娠させると、自分が出産するくらいの大張り切りのフレッドが笑いを誘います。妻のクレールは迷惑な事故に戸惑いながらも、仕方なくという構図。ところがフレッドの企みは露見してしまいますが、流石にどうしようもないという感じでした。二人のやり取りが大変面白くて、終始振り回されているクレールの様子が好感が持てます。ピアノ一筋に生きてきて、世間との付き合いはすべてフレッドに任せきりだったクレールの、天然さがとても新鮮でした。子供の出産がテーマですが、二人の夫婦の関係が、人生の新たな展開におけるロマコメのようでした。

こういった無理矢理望まない妊娠をさせてしまうのは、犯罪行為として映画でも語られますし、実際この映画の批判材料にもなってしまったようですが、それ以上に夫婦のかなり変わった良い関係が最終的にカバーしているので、微笑ましい感じです。マリナ・フォイスが、可愛らしい奥さんを演じていて好感が持てました。彼女は、「バレッツ」で見た事がありました。刑事役でした。そして、ジョナタン・コーエンは夫役として、大騒ぎしながら活躍しています。今度は主夫兼マネージャーで大忙しという事になるのでしょうか。くれぐれも奥さんのケアを怠らないように願いたいものです。

という訳で、ストーリーはかなり単純なもので、出産騒動記といった、妊娠から出産にいたるいろいろなイベントが、コメディとして描かれている映画でした。二人のオープンな関係が良く描けていて、夫婦のかたちを描いた映画としても面白いと思いました。気軽に楽しめて、なかなか良かったと思いました。さて、見続けてきたMyFFFですが、実写の長編はあと1本を残すのみとなりました。終わってしまうのは寂しくもありますが、最後の一本楽しみたいと思います。

2021.2.5 HCMC自宅にて MyFFF映画祭サイトよりのパソコン鑑賞

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「乙女たちの秘めごと」 絵のような農村風景と女たち

ちょっといわくありげな邦題がつけられた映画の鑑賞です。といっても原題の方は、「種まく人」みたいな意味で、そちらの方が、意味深かつ、映画の雰囲気ともあっていて、面白い原題だと思いました。2017年の映画で、監督はマリーヌ・フランセン。フランス・ベルギー合作の作品です。
原題:Le semeur (2017)

あらすじ
1851年12月、ルイ・ナポレオンは第二共和政を解散し共和派を弾圧。山岳地帯の小さな村では、男達がレジスタンス活動をしていたとして、全員が強制連行されてしまいます。女性ばかりとなった村では、男手なしで収穫時期を乗り切ると、全く通りかかる人の無い日々が続きました。若い女性たちは、村を維持する為、男が現れたら全員で共有しようと話しあいました。やがて再び春がきて収穫の頃、ジョン(ジェラルディン・ペラス)という鍛冶師という男が現れ、最初に声を掛けられたビオレット(ポリーヌ・ビュルレ)が世話することになります。ビオレットは男に、村に男手が無いことを話し、ジョンは男たちは戻らないだろうと話しました。

翌日からジョンは、収穫を手伝いはじめ、男一人の状態で何かと気まずい雰囲気の中、村人たちは彼が居続けることを願っていました。父のおかげて読み書きができるビオレットは、ジョンが持つ本を借りて読書するようになります。周囲も二人の時間が多くなるように配慮し、ジョンはビオレットへの欲情を示すと、二人は交わりました。翌日の二人の様子から、村人たちは、しばらくジョンが村に留まると考えます。やがて、同年代の女達は、共有の約束を持ち出し、ビオレットは嫉妬から怒りますが、村の存続のために、ジョンに事情を話すと、ジョンは尋常な話ではないと憤ります。しかし、翌日ジョンも思い直し、村の女達の意向を受け入れました。そして、ジョンとビオレットは、少しでも時間を多く作り、境遇に耐えるのでした。

ある日、ビオレットはジョンが生きるために殺人を犯し、逃走中であることを聞かされます。やがて、ビオレットが妊娠し、ジョンは一緒に逃げようと、ビオレットに話します。そこに、村の男が二人戻ってきました。男は、他の村の男たちの消息を伝え、可能な者は、戻って来るはずだと言います。男達はジョンに警戒心を持ち、ジョンも危機感を覚えます。長老は、男達が戻って来れば、ビオレットの子供やジョンが危ないと話し、ビオレットにジョンを追い出すように話しますが、ビオレットは彼と駆け落ちする道を選びます。そして、準備をしてジョンの元へ向かうと、すでに彼の姿はなく、再会を約した手紙を残して去った後でした。ビオレットはやがてジョンの子供を無事出産し、母親となるのでした。



乙女たちの秘めごと

このビオレットの物語は、どうやら実話ベースという事らしく、その伝承を知った監督が、魅力的な映画にまとめ上げたというものらしいです。その思いは、美しい絵葉書のような山上の農村風景として描かれています。草原や、山々の風景は勿論ですが、付近には美しい渓谷もあり、森もあります。そして、極めつけは高原に広がる刈り入れを迎えた麦畑の風景と、収穫する女性たち。この映画の代表的な風景だと思いますが、そこにはこの原題となった'Le semeur'、ミレーやゴッホの絵に描かれる、種まく人の原風景の農村の世界が描かれていました。種まく人は、下世話ではありますが、種をつける男と掛けていると思われます。

この映画は、スタンダードサイズで製作されています。奇しくも、青の寝室と続けてスタンダードサイズの映画を見ることになりましたが、意図はやはり絵画的な風景描写を強調したかったからだと思います。そのような風景の中で作られたのは、女たちの中に一人だけ存在する男という状況。男にとって、楽しそうに見えて、実は男にとっても、逃げ出したくなるような状況でもあります。あらゆる行動を監視され、噂され、何かすれば厳しい嫉妬の目で見られ、精神的に消耗しそうです。多勢に無勢で、生殺与奪権を握られている感じです。そして、帰ってきた男が彼を見る目も異様です。まぁ、そうですよね。

ストーリーは、男たちがいなくなった村に一人の男が現れ、女たちは約束通り共有し、男たちが戻ると入れ替わりに彼は去っていくという、簡単な構成ですが、きめ細かく描かれているのは、その間の二人や村人たちの心理であり、男の世話をするビオレットと男が恋に落ちていくところ。そして、周囲の女性たちは、二人を興味津々でチェックしています。そんなビオレットを演じたポリーヌ・ビュルレが、爽やかな雰囲気で、美しい映像に映えて良かったと思いました。

2021.2.3 HCMC自宅にて Amazon Prime よりのパソコン鑑賞

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「バーニング・ゴースト」 美しい映像と音楽で押す恋物語

オンライン映画祭の「第11回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)」からの鑑賞です。2021.1.15-2.15の期間中は、各国から無料視聴できる形です。今回は、2019年の映画で、ステファン・バチュ監督の作品です。カンヌでは、ACIDセレクションとして上映されました。
原題:Vif-argent (2019)

あらすじ
突然、自分が他人から見えない状態となったジェスト(ティモテ・ロバール)は、記憶も無くしていました。出会ったアルファ(Djolof Mbengue)にクラマルス(サディア・ベンタイエブ)のところに連れていかれ、彼女から仕事を手伝うように言われます。そして数年の月日が流れました。ジェストの仕事は、突然死が訪れ、何が起こったか判らない状態のゴーストを落ち着かせ、ゴーストの話から最後の思い出の記憶を作り上げでその世界へと誘導し、そこで、ゴーストをクラマルスに渡して、次の世界への橋渡しをする仕事でした。ある日、ジェストはゴーストでないにもかかわらず、自分が見えているアガト(ジュディット・シュムラ)と出会い、何度か話をするうちに、アガトは10年前に旅先で出会って雑魚寝した仲で、ある朝突然ジェストが消えて以来、ずっと心に残っていたということを話します。

ジェストの容姿は、その時と変わりませんが、アガテは今や一児の母でした。そんなアガトと会ううちに、ある夜二人は結ばれます。しかし、翌日アガトにはジェストが見えなくなってしまいました。ジェストは状況をアルファに相談しますが解決せず、ジェストはパニックになります。そして、再びアガトの家を訪れ、アガトにどうしても認識させたいジェストは、夜になって見えない幻の姿でアガトと愛を交わし、アガトはその幻を感じます。そして、突然アガトの祖母が事故で死んでしまい、悲しむアガトの横で、祖母のゴーストと連れだすと思い出を聞き、無事送り届けました。その時やってきたクラマルスは、ジェストに事務所に来るように言いました。

ジェストはもう一度アガトと会って話をしたいと頼み、クラマルスはチャンスを与えます。アガテに見えるようになったジェストは、アガトの誤解を解こうとしますが、気持ちの整理のつかないアガトはジェストを避けてしまいました。ジェストは父親と別れ交わし、アルファの家からも出され、町を彷徨います。再びアガトの家に戻ったジェストは、今度は逆にアガトの姿が見えなくなりましたが、彼女の乗ったタクシーに同乗し、彼女がジェスト宛に置いていった手紙を受け取りました。そこにはアガトの彼への想いと、再会を願う気持ちが記されていました。そして、公園の橋の上で佇む彼のもとにアガトが現れ、再会を喜び永遠の愛を誓いながら、その眼下の橋の下の道を楽しそうに歩く、二人の姿を見るのでした。



バーニング・ゴースト

美しい映像と、美しい音楽に満たされた、ゴーストとなった男のラブストーリー。不慮の死を遂げ、状況が把握できないゴーストを落ち着かせて、死への最後の思い出を作り、旅立たせます。そんなゴーストが出会ったアガトは、かつて触れ合った仲で、彼が見えてしまうのでした。かつてひと時の間出会って消えて以来、幻となっている彼を、ずっと思い続けてきたアガトと、そんな彼女の気持ちを徐々に理解し、最後に幻のように結ばれる二人。これでもか!という熱いようなクライマックスでした。

この映画、最後まで見ても疑問の残る部分も多く、解決されないような孤立したエピソードもあり、ある意味繋がりの悪い、すっきりしない映画だと思います。しかし、映像はフランスの田舎や公園など、死にゆく人の心の思い出に残っているような美しい風景がたくさん出てきますし、名場面にはいい音楽が流れます。そして、ラストはララフマニノフの2番の第二楽章がこれ見よがしに鳴り響きます。これは、ある意味ずるい力技というか、いくら頭の中に疑問が残っていても、有無を言わさずねじ伏せられた感じで、ただその魅惑的な世界の虜になってしまうという事になります。反則ですね…。しかし、超絶的に美しいラブシーンでした。

ヒロインのジュディット・シュムラの雰囲気がとてもいいと思います。大きな賞は無いと思いますが、舞台女優として、また映画俳優として両方で活躍する女優さんです。ゴーストのティモテ・ロバールは、初の長編映画。これからですね。そして、劇中に登場したセシリア・マンジー二は、この時92歳で映画初出演。60年代から70年代にかけて活躍した、ドキュメンタリー作家であり監督さんのようですが、しっかりした演技を見せてくれていました。とにかく美しい、ゴーストの恋物語。終わりよければすべて良しという感じで、しばらく余韻が冷めませんでした。

2021.2,1 HCMC自宅にてMyFFF映画祭サイトよりパソコン鑑賞

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「青の寝室」 逃げられない不倫の代償をクラシカルに描く

最近見続けているフランス映画の延長線で、Amazonからの鑑賞です。ジョルジュ・シムノンの小説を原作とするこの映画は、カンヌ映画祭のある視点部門にノミネートされました。2014年の映画で、監督はマチュー・アマルリックです。
原題:La chambre bleue (2014)

あらすじ
映像では、取り調べ室のジュリアン(マチュー・アマルリック)と、彼の過去の回想が交互に描かれていきます。ジュリアンは農機具修理会社の経営で成功していますが、今や警察の取調べを受けていました。ジュリアンは妻デルフィーヌ(レア・ドリュッケール)、と娘スザンヌと共に故郷に移り住むと、そこで同級生だったエステル(ステファニー・クレオ)に再会します。彼女は薬局を営む夫と結婚していましたが、二人は不倫関係となり、一年近い間、ホテルで濃密な関係を続けていました。エステルのピロートークに言葉を合わせていたジュリアンですが、家庭を犠牲にするまでのつもりも無く、ある時、窓の外に夫らしき姿を見て、その後距離を置くようになります。

ジュリアンはその後、罪滅ぼしに家族サービスに努めますが、エステルから、「全て順調」、「もうすぐ」といった手紙が届きます。以前から病弱だったエステルの夫が急死し、「次はあなたの番」という手紙まで届けられました。そして、エステルの夫の死は人々の噂のネタとなり、ジュリアンはエステルを無視し続けます。そして夫の死からしばらくして、デルフィーヌに頼まれて、エステルの薬局へ行き、薬と、デルフィーヌが注文したジャムを受け取りました。家へ持ち帰って、仕事で遠出したジュリアンは、帰宅すると警察に拘束され、デルフィーヌの死を告げられます。死因は毒物が混入されたジャムでした。そして、ジュリアンは容疑者となり裁判にかけられます。

取調べで、拘留中のエステルと同席したジュリアンは、エステルのジュリアンの家族を軽視する発言を聞き、エステルに殴りかかります。そして二人を被告人とした裁判が始まると、証言も二人に不利なものが続き、エステルは夫殺しを否定しつつ、ジュリアンを愛していると公言します。ついに二人は終身刑を言い渡され、呆然とするジュリアンに、エステルは「ほらね、一緒になれたわ」と言って法廷を去っていくのでした。



青の寝室

シムノンといえば、メグレ警部なのですが、メグレ警部が登場しなくとも、ミステリー的なストーリーを期待してしまいます。そして、内容は確かにミステリーっぽいお話でした。どちらかと言えば心理スリラーということなのでしょうか。まずは、スタンダードサイズの映像に少し意表を突かれました。それは、絵画的な美しさを強調するものかと思います。あとは。60年代の雰囲気を出しているのでしょうか。原作小説が60年代の出版ですし、ラストのキャストの一覧もクラシカルな雰囲気で作られていました。

ストーリーは、不倫の末と思わる殺人事件が発生し、身に覚えのない(と思われる)罪に問われたジュリアンが、為す術も無く有罪なるというお話。それにはきっと不倫の負い目や、自ら蒔いた種で妻が殺されたことや、何やかやの罪の意識があって、強く反論もできず、その気力もなく…、という事かと思いましたが?そういう話なので、冤罪感はあまり出ず、不倫の代償の印象で裁かれてしまいます。不倫の末に妻を殺された男が、感情もださず、反論もできなければ、世間の視点からは圧倒的に不利で、有罪も仕方がないという事でしょう。設定は現代のドラマですが、クラシックな内容で、せっかくなら時代も古い話にしても良かったかと思いました。

ラストは、ブゾーニ編曲のシャコンヌで締めています。裁判が始まってからずっとBGMで流れますから、シャコンヌを聞きながら、現実離れした場所から見ておいて、という感じでした。全体として、芸術的な映像イメージや音楽効果で、シムノンの小説を元に、不倫と罪悪感やその代償の観点から描いた形で、実際の殺人の場面や、犯人は特定されず、あるいは問題にされていません。そこは、読者(聴衆)の想像に任され、あくまでも不倫の呪縛から逃れられない男と、逃がさない女のお話でした。エステルも、事件の部分では画面には登場せずに、そのモンスターぶりは想像の中で表現されます。恐ろしい結末を迎える不倫ものの、典型的なパターンでもありました。

2021.2.2 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ジャスト・キッズ」 突如大人の役割を背負わされて悩む青年

オンライン映画祭の「第11回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)」からの鑑賞です。2021.1.15-2.15の期間中は、各国から無料視聴できる形です。今回は、2019年の映画で、クリストフ・ブランの監督の作品です。フランス・スイス合作です。
原題:Just Kids (2019)

あらすじ
母を亡くした19歳のジャック(ケイシー・モッテ・クライン)、17歳のリザ(アナマリア・ヴァルトロメイ)、10歳のマティス(アンドレア・マジウッリ)の兄弟に、突然父親が列車に轢かれて亡くなったという知らせが入りました。親族が集まり、成人していたジャックがマティスが後見人となり、叔父(イブ・コーモン)が後見監視人として三人の支援を行う事となりました。しかし、まだ若いジャックは状況に戸惑い、家でパーティーを開いてバカ騒ぎをしたうえ、マティスを学校に送ると、恋人のモーリーン(Angelina Woreth)と楽しむ日々を過ごしますが、そんなジャックに愛想をつかして、リザは彼氏と南仏に旅立ちました。

父の最後について詳しいことも解らぬまま、過去から抜け出せないジャックは、残された父のメールからスペインで取引をする予定だったことが解ります。父の遺品のカメラを見つけてすっかり写真好きになったマティスとスペインに向かいますが、そこで父が買い取ったものとは、大量のハムでした。仕方なく車にハムを積み込んで帰りますが、あまりの臭いに耐え切れず、途中ですべて捨ててしまいます。住んでいたマンションを売り払い、南仏の海沿いの街に移り住んだジャックとマティス。マティスは新しい学校に通いメリンダという彼女ができますが、彼女は寄宿学校に転校して去っていきました。

訪ねてきたリザととも諍いを起こし、過去にとらわれて前向きに生きていけないジャックを、モーリーンはいつまでも大人になれないと愛想をつかし、出て行ってしまいます。連絡が途絶えたジャックを心配してやってきた監視人の叔父から逃げ回るジャックですが、ついに叔父に心を開き、自分の未熟さや悩みを告白しました。その夜、因縁をつけられたジャックはボコボコにされ、一人海に向かいます。心配して探し回るモーリーンとマティス。ついにジャックを見つけて3人で抱き合いました。そして、ジャックは働きながら海辺で過ごし、マティスは写真に余念がありません。そして、マティスは帰ってきているメリンダを見つけるのでした。



ジャスト・キッズ

どちらかといえば遊び人タイプで、生活力など全く無さそうなジャックが、突如弟の後見人となり、責任を持たされます。どうやら、資産は十分にあるので、生活の心配はなさそうですが、突如として背負った責任や、連続した父母の死が自分の中で全く消化できていない状態で、いつまでも過去にとらわれ、そしていつも死の影にとらわれるばかりで、一向に前向きに進むことができないでいました。そんな、青年の悩みと行動を描いた映画で、最後には自ら周囲に悩みを打ち明け、周りからも支えられて、前に向かって歩き始めます。

映画の中で、いろんな転機があると思いますが、ストーリー自体にはさして意味がない感じで、あまりわかりやすい映画ではありませんでした。物語の進行より、個々のイベントに影響されるジャックの心の動きを追う映画と思いました。最後に死臭がすると言って絡まれることが、ジャックに転機を与え、自らを死臭の中に埋没させていた彼は、そこから脱却を図ったことになります。そして、ジャックは周囲の人々、自分が面倒みるはずのマティスや、恋人のモーリーンたちに寄って支えられています。そのような追い込まれて抜け出せない心と、それを助け上げる友人や家族たちを描いた、繊細な映画でした。

出演者もほぼ知らない人たちばかりですが、ケイシー・モッテ・クラインの演技は、悩めるナンパな男の雰囲気が出ていて、素晴らしいと思います。対するヒロインはAngelina Woreth。ちょっと雰囲気が良かったです。そして、アナマリア・ヴァルトロメイの名前に目が留まりました。久しぶりに出会いましたが、あのイオネスコの「ヴィオレッタ」で、主役の少女を演じていた女優さんですね。地道に活動は続けているようで安心しました。映画自体は、それほど印象深いという感じではありませんでしたが、それなりに手が込んでいて、いろいろ楽しめた映画でもあり、良かったと思いました。

2021.1.30 HCMC自宅にて、MyFFF映画祭サイトより鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「フェリチタ!」 思いのまま自由に生きる家族の幸福

オンライン映画祭の「第11回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル(MyFFF)」からの鑑賞です。2021.1.15-2.15の期間中は、各国から無料視聴できるほか、Amazonなど多数の配信サイトからも作品が見られるようになっているようです。今回は、2020年の映画で、ブルーノ・メルルの監督の作品です。フェリチタは幸福といった意味ですね。コメディです。
原題:Felicità (2020)

あらすじ
レストランで食事中のティム(ピオ・マルマイ)とクロエ(カミーユ・ラザフォード)、そして11歳の娘トミー(リタ・メルル)。トミーは父から、自分たちの本当の子ではないと言われますが、すぐに嘘と見抜きます。家族の間でそのような冗談で困らせるのは日常茶飯事でした。その日の朝、明日から新学期という日に目覚めた3人は、その家の持ち主が一日早く帰ってくることを知ります。実は一家は、留守中に勝手に住んでいたため、家を元通りに片づけて家を飛び出したのでした。そしてレストランに寄ってから小さなビーチで遊びますが、泳げないクロエは砂浜で置いてきぼりでした。

再び掃除の仕事の為に、朝を迎えた家に戻って行くクロエは、別れ際に自分がかつて出たポルノがネットに流出し、ティムの友人に脅されていると告白します。驚くティムにクロエはいつものジョークだと言って安心させますが、ティムは心の中に不安を覚えます。クロエが出かけるとティムとトミーと遊びながら、かつて刑務所に入っていた原因は、ギャングに自動車泥棒をさせられていたからだと話します。その夜ティムは、戻らないクロエを迎えに行くため、車を借りに友人を訪ね、それとなくポルノ動画のことも探りますが、何も得られません。そして、結局車も借りられず、クラブに止められていたスポーツカーを盗みました。

クロエは家の前に停められた車の中にいませんでした。ティムはトミーを置いて家の方に向かうと、トミーは横に現れた宇宙飛行士に、付いていくか行かないかが運命を変えると言われます。付いて行ったトミーは父が家で騒動を起こし、家族全員を射殺する場面を目撃します。しかし、それは空想で、トミーは車で待ち、途中で合流したティムとクロエは一緒に戻って来ました。ティムは警察に通報され、追跡されますが、何とか振り切ります。翌朝トミーは一人で歩きだし、追いかけてきたティムに誰も殺していないか尋ね、殺していない返事をもらうと、ティムの車に乗って、何とか学校に間に合います。しかし、ティムはそこに待ち構えていた警察に逮捕されてしまいました。数ヶ月後、妊娠していたクロエのお腹はすっかり大きくなり、刑務所から出てくるティムを二人で楽しそうに出迎えるのでした。



フェリチタ!

フェリチタは、すなわち幸福なのですが、その日を行き当たりばったりに過ごす3人の家族の様子の上に、その幸福を描きます。あくせく働くために生きるでもなく、嘘と真実の狭間で、刹那的に生きる家族。宇宙飛行士は、分岐点について語りますが、それを上手くやり過ごしながら、心で結ばれた3人には影がありません。トミーは想像で、父親が殺人を犯してしまったと疑いますが、刑務所から出るのが早かったので、本当にそうでは無かったようです。この物語の中で、相手を困らせるジョークが連発されますが、どれも真に迫っているので、聞いただけで、何が本当か判らなくなるのも事実です。

そんな家族の姿が、緊張感があり、かつ幻想的な映像で描かれていました。その中にあるのは、自由で躍動的な愛だったと思います。泳げないのに、猿の縫いぐるみを取りに行くクロエに、母の愛を感じます。最後もティムとトミーの為にしっかり演出してあげます。映画の中で親子でフリークスを鑑賞しますが、普通の人間が怪物。普通であることは何かを隠しているという結論になりました。3人の普通でないことが、非常に自然であることを表現しているのでしょう。思いのままに、愛を持って素直に生きることが幸福な事だ。そういうメッセージと思いました。

トミーの目から見た、面白い家族の映画という風にも感じられます。トミーは比較的冷めた目で、親たちの行動を見て、感じて成長しています。前向きな自由を自分の中に溜めて行っていることでしょう。このトミーを演じるのは、監督の娘さんなんですね。監督は、娘としてではなく、女優として見ていたと言います。親を見つめる雰囲気も面白くて、表情豊かで、彼女の演技が成功のカギでもあると思います。雰囲気のいい、楽しい映画を鑑賞させていただきました。

2021.1.28 HCMC自宅にて、オンライン映画祭、MyFFFサイトより鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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