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「快楽の悪の華」 ハイソな暮らしに潜む狡猾な心の蠢動

新着のAmazonの映画に、一風変わった香りのするドイツ映画があったので、さっそく鑑賞してしまいました。2013年の映画で、監督はマーティン・ヤブロンスキーです。エロスとスタイリッシュな映像に期待です。
Trugschluss (2013)

あらすじ
気鋭の弁護士だったダーヴィト(トーベン・カストゥンス)は、ローンで豪邸を購入し、妻のレベッカ(カタリン・ボーン)と幼い赤ん坊と暮らしていましたが、今は法律事務所を解雇され、高級男娼をしていました。すべて家族には秘密で、レベッカは不在の多い夫に不満を抱き、ダーヴィトは関係修復の為、休暇を求めますが、次の新規顧客の対応をしなければ、妻にバラすぞと脅されます。仕事に向かうと、待っていたのはキム(イエルク・リヒター)という男性で、想像以上の金額を掲示してきますが、ダーヴィトは、男性相手はできないと断りました。すると、キムは24時間だけ待つと言って別れます。その日、ダーヴィトは雑誌でキムの記事を見かけ、同僚にゆすりの計画を持ちかました。そして、キムと再び会い、窓の外から証拠写真を撮らせると、やはり無理だと言って帰りました。

キムの妻は環境相で選挙を控えていました。彼女はゆすりの写真を受け取ると、金を払おうとしますが、コンサルタントのヤンス(ゲルハルト・モーア)から、自分に任せるように言われます。ヤンスは部下のアートゥア(イエルク・ヤーマン)を使って対応させ、アートゥアは証拠をたどって関係者を次々と始末し、ダーヴィトにたどり着きます。ダーヴィトはヤンスに、解雇と売春を妻にバラすと脅され、解雇された法律事務所の顧客名簿を要求されます。ダーヴィトは元同僚に頼んで名簿を持ち出すと、今度は、ヤンスは製薬会社の乗っ取りの為、ダーヴィトに会社の事業計画の資料を要求しました。

レベッカの姉のスザンヌは、ダーヴィトが浮気していることに気づき、妹に話します。レベッカは法律事務所を訪ねると、夫が解雇されたことも判明します。ダーヴィトはヤンスの依頼を果たすと、次の仕事を断りました。ダーヴィトに仕事をさせる為、ヤンスはレベッカを拘束しますが、ダーヴィトは、自分の顧客で、夫が以前ヤンスの仕事仲間だったという女性を訪ねます。ダーヴィトは、ヤンスを刑務所に送るのに十分な、夫の持つ記録書類を受け取り、ヤンスと交渉。書類と引き換えにレベッカを解放させたのでした。10ヶ月後、ダーヴィトとレベッカは心理療法を受け続ける中で、ヤンスは製薬会社の買収を完了していたのでした。



快楽の悪の華

新たにAmazon Primeの特典動画に出ていたので、エロスも少し期待して鑑賞しました。原題のTrugschlussの訳語は、何がぴったりなのか難しいですが、普通は「誤謬」とか「迷妄」とか、とにかく、間違った判断とか信念の様な意味のようです。そういう意味では、ゆすりは間違った判断であり、男たちは、歪んだ信念を持っています。エロスについては、有閑マダムの火遊びに対応する男娼という取り合わせで、男の暴力的な行為に対して光悦となる女性がでてきます。そして男色のベッティングが少し。場面は多くはありませんが、倒錯的な映像で、エロス感はよく出ていると思いました。しかし、それは導入から前半までで、後半は普通にサスペンスでした。

この映画の映像は、ちょっと特徴的だと思いました。映し方が少し変です。斜めから見上げて見たり、あるいは見下げて見たり、遠近感が微妙に強かったり、人物を映すときに、体や顔の半分が切れているというところが、繰り返し、しかも自然に出てきます。また、奥の方ピントをぼかしたりします。こういった画像は、見ているとちょっと神経を逆なでするような効果を持っていて、ちょっと気に障ります。一方で、部屋のセットなどは、ヨーロッパのアート的な感覚が強く、美しいものでした。一風変わった、面白い感覚です。

ストーリーは、彼らの実際に巻き起こす事件や顛末を辿ると言うより、ハイソな人々の歪んだ動機や行動自体に焦点を当てているように思います。裏で糸をひく闇の実業家が、狡賢い青年に同類の臭いを感じ、仲間に引き入れようとしますが、対立して対決するという構図。周囲の人間はこれに巻き込まれ、殺されたり誘拐されたりということです。実際に起こる事象については、説明不足かなという感じがします。演技の中で、レベッカの姉が、レベッカに夫の実態を告げ口するところは、いやな女という感じが非常に強く出ていて、拒絶感が生まれる程でした。疑り深さが、顔に染みついるような女性でした。そういう人間の暗い心理を、清潔で高級感のある生活感を背景に、異様な画面の構図で描いていくという、不思議な感触のある映画でした。

2019.12.11 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞
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テーマ : 映画レビュー
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「コーヒーをめぐる冒険」一日でベルリンと人生の縮図を体験

ちょっと気軽にヨーロッパ映画を見るという感じで鑑賞しました。今回はドイツの映画です。2012年の映画で、監督はヤン・オーレ・ゲルスター。ドイツ国内の受賞のほか、各地の映画祭に出品され、受賞歴も多い作品です。

あらすじ
恋人の家から朝のコーヒーを飲まずに出かけたニコ(トム・シリング)は、大学を中退し、かつ免停中。免停解消の為訪れた役所でも、復活はかなわず、ATMに行くとカードが飲み込まれてしまいます。部屋に戻ると、上の階に住む男が挨拶にやってきて、ひとしきり夫婦生活の愚痴を聞く羽目になりました。そして、友達のマッツェ(マルク・ホーゼマン)に呼び出されハンバーガーショップに行きますが、ここでもコーヒーが飲めません。ハンバーガーショップで、昔の同級生ユリカ(フリーデリッケ・ケンプター)と出会います。元々太っていて、ニコはいじめていましたが、寄宿学校に転校し、今ではスリムな美人になっていました。そして、劇団に所属して活動中で今夜のチケットの予約をしてくれます。

その後、マッシュとともに、友人の映画撮影現場で見学したあと、父からの電話でゴルフに誘われ、金の無心もあって向かったゴルフ場では、クラブハウスでもコーヒーが飲めず、父から大学中退を咎められたうえ、ATMの件も、父にカードを止められたことが原因であることが判り、今後援助はしないと言われ、当面の生活費だけ置いて父は立ち去りました。帰り道に、鉄道職員に無賃乗車を疑われ、煙に巻いて逃走。マッツェの車で薬の売人のマルセル宅を訪ね、薬には興味が無いニコは、孫が売人をしているとは知らない祖母の自慢のマッサージチェアで休憩し、ユリカのパフォーマンスの場所へと向かいました。

そのパフォーマンスの前衛的な動きにマッツェは笑ってしまいますが、公演後のパーティーに出席した二人は、演出家に笑ったことを咎められ、ひとしきり口論に。ユリカとニコは外へ出ると、不良に絡まれ、ユリカは譲らず徹底抗戦。結果、ニコが殴られてしまいます。ユリカの家で治療をしてもらい、ユリカに迫られ、太っている自分を抱きたいと言ってと懇願されると、違和感を覚えたニコは拒否してしまい、ユリカは逆上、ニコは追い出されました。夜中のバーに入ったニコは、またもやコーヒーが飲めず、仕方なく酒を頼むと、見知らぬ老人に声をかけられ、子供の頃に見た終戦時のベルリンの話を聞かされ、老人は店を出るとその場で昏倒します。ニコは救急車を呼び病院へ付き添いますが、老人は亡くなってしまいました。病院を後にしたニコは、すでに夜が明けた街角で、やっと一杯のコーヒーを飲むことができちゃのでした。



コーヒーをめぐる冒険

ニコのある一日を描いた物語。自分も含めてどこかに不満や劣等感を負った人たちが、執拗に絡んでくる一日でした。どこかで、連鎖を振り切りたいニコですが、気分転換できるはずのコーヒーがどこでも手に入らず、ずるずると一日巻き込まれていきます。そこで出会う人は、現状の不満を悉くニコにぶつけてきました。それは、ベルリンの縮図でもあります。

免停の解消に訪れたニコに対する人物は、ことごとく嫌味で上げ足をとってくる人物。お役所を代表しています。キャッシュカードが機械に飲み込まれるのは、この街で起こる悲劇の一つ。アパートにあいさつに来た男は、老年に差し掛かり、家庭の不幸をニコに全開で話してきます。ハンバーガーショップでは昔のガールフレンドに合いますが、かつてデブと蔑んでいた彼女が、脱デブに成功して美人になり、前衛舞台に立っていました。そして、過去のトラウマを解消するようなセックスを求めてきます。

劇団の作家氏は、先鋭的な議論を吹っ掛ける人物。町のゴロツキと、躱して生きることを捨てた女のぶつかり合い。映画館では、ステレオタイプのナチスもののラブストーリー。薬の売人と世の中を超絶し、疑うことをせず、自分の世界に生きる、親切なおばあさん。鉄道駅では、無賃乗車を疑われたのは、二人組漫才のようなコンビの調査官。そして、敗戦時の思い出を語り、そのまま死んでしまった老人。それらをすべて体験して朝を迎え、やっと一杯のコーヒーにたどり着きました。

これらの出会いが、親からも見放されたニコにとって、何をもたらしたのかはわかりません。一日で人生の縮図を体験し、確かに言える事は、これからも一人でずっと生きていかないといけないという事。新しい一日の始まりはコーヒーからということで、かすかに希望が見えてくる雰囲気でした。流れるジャズ長の音楽が、いい雰囲気を出していたと思います。

2020.5.18 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「クロッシング・ウォー 決断の瞬間」 海外派兵の意義とは

2014年の映画で、ドイツの作品。フェオ・アラダク監督、脚本によるものです。アフガニスタン駐留のドイツ軍を舞台として、現地との文化の違いがもたらす苦悩と災厄を描く作品で、ベルリン国際映画祭ではコンペティションのノミネート作品となりました。

あらすじ
イェスパー(ロナルト・ツェアフェルト)は、アフガニスタンでの駐留を引き受け、現場の小隊の長として派遣されます。彼の兄は、アフガニスタンで作戦遂行中に殺害されていました。今回のイェスパーの部隊のミッションは、駐留する地域で影響力を増しているタリバンに対して立ち上がった、反タリバンの小さな村を守ることでした。そして、地元との交流の為、タリク(ムフスィン・アハマディ)という若いアフガニスタン人の通訳を雇い入れ、現地との折衝の窓口とします。

タリクの助けも得て、イェスパーは村のコミュニティやアフガン民兵の信頼を獲得しようと努力しますが、文化間のギャップは大きく、細かな障害が立ちはだかります。その中で、イェスパーは自分たちでできる範囲で真摯に対応していきますが、本部が関与することになると、取り巻く状況の違いから許可が得られず、結果、最終的な信頼が得られないというジレンマに陥ります。一方、町に住むタリクの妹ナラ(サイダ・バルマキ)は、タリクがドイツ人のために仕事をしている為に、タリバンから脅されていました。タリクは村のリーダーと部隊に頼み、ナラを部隊の監視下に置く許しを得ました。

しかし、タリクがナラを連れて基地に戻る途中、狙撃されてしまいます。ナラは致命傷を負ってしまい、タリクが妹を基地まで連れてくると、イェスパーは重傷のナラのドイツの野戦病院までの搬送を依頼しますが、却下されてしまいました。イェスパーは周囲の反対を押し切り、守備を部下に代行させ、自らピックアップでナラを搬送することにしました。ナラの手術は成功し、命を取り留めます。しかし、不在の間に部隊が襲撃され、代行で指揮にあたっていた部下が殺されてしまいます。その結果、イェスパーは裁判を経て除隊されてしまいました。タリクは語学教師に戻り、ナラも進学への道を歩み始めたある日、タリクはバイクで走っている時、近寄ってきた車からの凶弾に倒れたのでした。



クロッシング・ウォー 決断の瞬間

アフガニスタンに駐留するドイツ軍のお話です。タリバンに対抗することを宣言した村の自警団を護衛するという任務につくドイツ軍の小隊。隊長は兄を同じくアフガンで失っています。平穏に日常生活が行われているように見える町の方も、タリバン派でないと判ると、標的となってしまうという世界です。その中で、ドイツの小隊と村の自警団と村人たち、ドイツ軍に雇われた通訳とその妹の行動が交錯し、任務と人道の狭間で葛藤が指揮官に生まれ、悲劇へと導かれます。

そもそも、どこにも出口の見いだせない話でした。派遣されたドイツ兵は、彼らの論理で行動しますが、全く地元の村人と考え方が相容れません。また、譲歩出来たところで、今度は本部と考え方が合わなくなります。いったい、彼らがここにいる意味は何なのでしょうか?という素朴な疑問が湧いてきます。それは、なぜ自分の国を出て、異民族の国に行くのかという基本的な疑問をも生じさせます。平時の旅行とか、物見遊山なら判りますが。地元にとっては、文明化とか、西洋風の価値観の押しつけとか、大きなお世話なんでしょう。派遣する国からみれば、世界各地に一定の影響力を持つという目的にはなります。

国家としての目的からすれば、ドイツ軍の本部の行動は理にかなっていますし、混乱を避けるという意味において、隊長の行動は許されないことなのでしょう。そもそも妹を迎えにやった時点で、リスクをたくさん抱えることになります。しかし、そういういろいろな事が起こるのが、戦場であり人間社会であり、また現場であると言わざるを得ません。それだけに、こういった支援活動を行うからには、派遣元である本国も含めた責任を持った対応が求められることと思います。現場に立ってみれば、その場その場で最大限の危機管理を行う事しかないはずです。アフガニスタンの風景の映像は初めて見るものですが、とても素晴らしい映像でした。

2020.3.7 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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<短編> 'Bis Gleich' (2014)

20分ほどの短編映画。このぐらいの長さの方が、物語性や叙情性が良く感じられ、ほどよい時間を楽しめるかなと思いました。お年寄りをテーマにした短編映画です。題は、ドイツ語で「またね」という感じですかね…。

あらすじ
べルリンのある街角に、年老いたアルベルト(Horst Westphal)は、毎日窓際にクッションを置き、道行く人を眺めていました。ある日、向かいのアパートに、同年代の女性マルタ(Gertrud Roll)が、やはり窓際で編み物をしているのに気づきます。毎日道を歩く人はだいたい決まっていて、同じ時間に通っていきますが、日によって様子が違うようです。アルベルトは、毎日見かけるマルタが気になり、合図を送りますが、マルタはあまり乗ってこない様子。アルベルトも、マルタの家の中に夫の影を見つけ、ちょっとへこみました。

ある日、いつものように編み物をしていたマルタは、夕暮れになってもアルベルトが窓際に現れなかったので心配になります。そして次の日、意を決して道を渡ってアルベルトのアパートに行くと、アルベルトはベッドに横たわっていて、娘のエラ(Julia Richter)が看病していました。アルベルトは動けないらしく、マルタはエラに、翌日の午前中アルベルトを見ていてほしいと頼まれます。翌日アルベルトの部屋からいつもの道行く人を見たマルタは、自分の家に戻るとたくさんの物を運んできて、アルベルトの部屋に配置しました。それは、たくさんの鏡で、寝ているアルベルトから、ポイントが眺められるようになっています。マルタはアルベルトに「またね!」と別れを告げ、自分の部屋に戻ると、窓際で編み物を始めました。それを鏡の反射で見たアルベルトは、マルタに向かって軽く手を振るのでした…。



Bis Gleich (2014)

20分間の心温まるお話です。ストーリーはさておき、前半は毎日変わらず道を行く人の描写が見事です。日常性と連続性がよくあらわされており、特に道行く男女の様子から、生活と時間の動きがよく表現されていると思いました。そして、二つの窓の距離感の描写。窓はほとんど対面にあり、目と鼻の先といったところ。しかし、マルタが渡るとなると、障害もあり、ましてや荷物が大量にあると、荷車を引いて大きく迂回しないといけない。距離感の表現として大変面白く感じました。

世代格差みたいなものも見て取れます。いつもそこにいる老人二人とは別に、忙しそうな若者たち。町の中で、老人の置かれた境遇も浮き彫りにしました。マルタが鏡を持って会談を上がる映像も、老いとそれでも前向きな姿勢を感じさせます。そして、日常の時間の連続が絶たれる瞬間は、アルベルトが窓際に現れなかったこと。そして、鏡によって距離感もすべて解消し、再び日常に戻ることになりました。一つ一つの所作や表現を大事にした。素晴らしい作品と思いました。

主役の二人の俳優さんについては初めて見ますが、長年テレビドラマで活躍されていた方のようです。スムーズで素晴らしい演技でした。映画祭にも出品され、2つほど受賞があるようでした。心温まるストーリーで、コミカルな中に面白い表現が詰まっていて、秀作だと思います。「またね」という距離感も面白く、程よい20分の時間を楽しめました。

Data
監督:Benjamin Wolff
脚本:Tara Lynn Orr
製作国:ドイツ・アメリカ
公開年:2014
時間:20 minute
スペック:カラー
Imdbリンク:Bis Gleich (2014)

2020.5.1 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「ボヴァリー夫人(2014)」 ワシコウスカ版、結婚~服毒まで

フローベールのボヴァリー夫人は、1857年に出版されたフランスの小説で、当時はその内容から風紀紊乱の罪で起訴され、無罪となったという経歴を持ちます。名監督や名女優により、今まで何度も映画化されていますが、今回見るのは最新のもので、2014年のミア・ワシコウスカ主演によるものです。監督はソフィー・バーセスで、ドイツ・ベルギー・アメリカ合作の作品となりました。

あらすじ
修道院を出て年頃になったエマ(ミア・ワシコウスカ)は、両親の勧めで村の医者のチャールズ・ボヴァリー(ヘンリー・ロイド=ヒューズ)と結婚します。ところが、エマはもともとロマンティックな空想に浸るのが好きな女性で、やがて結婚生活にも、自分の理想との差を感じ始めました。村では、薬剤師オメー(ポール・ジアマッティ)や、公証人書記の青年レオン(エズラ・ミラー)といった人物と交流する中で、エマはレオンに惹かれていきますが、レオンは突然法律の勉強のため都会に惹かれて去ってしまいます。そんな中で、資産家のロドルフ(ローガン・マーシャル=グリーン)が下男の治療の為チャールズを訪ねてくると、エマに目をつけた遊び人のロドルフはエマを口説き、彼女は誘われた狩りに同行し親密になっていきました。

一方、夫のチャールズは、オメーから成功すると高名な医者になれると言われ、エマも勧めた足の外科手術に手を出して失敗。患者の足を切断させることになってしまいます。ふがいない夫に失望するエマですが、この時義足を用立てた商人ルウルー(リス・エヴァンス)に気を許し、勧めるままに贅沢品を買うようになっていきました。そしてエマは密会に飽き足らず、ロドルフに駆け落ちを迫りますが、ロドルフは約束を破り、別れの手紙を書いて姿を消してしまいました。ショックを受けたエマは沈んでしまいますが、ルウルーに気晴らしにと劇のチケットを貰い、夫とルーアンに観劇に出かけ、そこでレオンと偶然再会します。

レオンへの情熱が復活したエマは、ピアノの稽古という口実でルーアンに通うようになり、買い物に使ったルウルーへの借金も膨らんでいき、ついに裁判所から差し押さえの通知が来たため、返済のために奔走するようになります。レオンは上司から密会を禁じられ、帰ってきたロドルフからも金を出すことを拒絶され、ルウルーに媚びを売っても相手にされなかったエマは万策尽き果て、毒を飲んで森に入り自らの命を絶ったのでした。日の暮れた森にエマをさがすチャールズたちの声が響くばかりでした。



ボヴァリー夫人2014

ボヴァリー夫人は未読ですので、大筋は情報により理解しているのですが、物語の細かなニュアンスを読んで知っている訳ではありません。また、他の映画化作品も見たことはないので、今のところ比較することもできないので、とりあえずこの映画を見た印象です。ストーリーはそこに存在するものとして、なるべく映画の印象ということで…。

この映画は、原作のメインの部分(つまり真ん中)を抽出して映画化したもののようです。エマが結婚して、平凡な夫との生活に退屈し、そして落胆し、無理な行動に出てしまい、服毒するまでの物語でした。その行動の動機となる退屈さや、夫への失望は、ストーリーとして書かれていますが、心情を吐露するような強い表現ではないと思いました。道ならぬ恋に流れていく葛藤も、ごく自然体で描かれています。普通にそうなっていったという感じで、淡々としているくらいに感じました。一方で、男たちから捨てられていく様は、明確に強い感情が噴出する形だったと思います。従って、なんとなく流れていったが、結果としてやらかしていったという雰囲気です。物語を読んだ時の印象はどうなのでしょうか?

映像は流石に最新の作品だけあって、美しいものでした。ワシコウスカの演技はあまり飾らない感じで、田舎の貴婦人という役柄にあっていると思います。表情や所作も素晴らしいです。そして、衣装も見事だったと思います。原作のストーリーの核心部分を最新の美しい映像で、忠実に追ったという感じではないでしょうか。それほど強い主張は感じませんが、美しい映画だと思いました。

この作品にはたくさんの映画化があって、有名な監督や俳優さんたちが挑戦しています。ジャン・ルノワール、ヴィンセント・ミネリ(ジェニファー・ジョーンズ)、クロード・シャブロル(イザベル・ユペール)、アレクサンドル・ソクーロフ(セシル・ゼルヴダキ)。ヨーロッパの作品が多いようです。エマの性格描写もいろいろありそうで、いろいろなボヴァリー夫人像が興味深いと思います。

2019.12.8 HCMC自宅にて Amazon Primeよりのパソコン鑑賞

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「グリプスホルム城」 トゥホルスキ-による自伝的恋愛小説

ドイツのユダヤ系風刺作家である、クルト・トゥホルスキーは、ナチスの迫害を危惧して国外に逃れ、最終的にスウェーデンへで亡くなりました。クルト・トゥホルスキーという人物については今まで知りませんでしたが、この時期ナチスから迫害を受けた小説家であり、知識人の一人です。この映画は、その逃避行の出来事を扱った、自伝的要素を持つ1931年の恋愛小説「Schloß Gripsholm」が原作となっています。2000年の、ドイツ・スイス・オーストリア合作作品で、クサヴァー・コラー監督の作品です。スイス代表としてアカデミー賞外国語映画賞に出品されましたが、ノミネートには至りませんでした。

原題:Gripsholm

あらすじ
クルト(ウルリッヒ・ネーテン)は、ユダヤ系ドイツ人でベルリンでジャーナリストとして活躍していましたが、ナチスに批判的であったため、ナチス勢力の増大に伴って干渉が増え、ある夏休みに、編集者に恋愛小説でも書くことを約して、恋人のリディア(ハイケ・マカチュ)と一緒にスウェーデンに脱出することにしました。支援者であるスウェーデンの貴族の計らいで、グリプスホルム城に住み、2人だけの愛の日々を送っていると、ある日親友の空軍パイロットのカールヒェン(Marcus Thomas)が飛行機に乗って現れ、またしばらくしてベルリンのクラブ歌手のビリー(Jasmin Tabatabai)も現れて4人の生活になります。

城での再会を祝し、4人の休暇が始まる一方で、本国のドイツではさらにクルトの「すべての兵士は殺人者である」などの言動に対するに法的な措置も執行されるとの情報が入り、クルトは元々覚悟していた通り、帰国しないことに決めます。同じドイツの愛国者でありながら、ユダヤ人作家と、空軍パイロットという親友の二人の葛藤は増大し、ついに衝突してカールヒェンは去り、3人の生活になると、打ち解けた愛の日々を送った後、ベルリンに活躍の場を求めるビリーは、復帰するために去っていきました。

城の近くには寄宿学校があり、その中で一人の娘アダ(Sara Föttinger)が教師たちから厳しくしつけられていました。学校になじめない彼女は半ば虐待のような仕打ちを受けており、ある日2人のところに逃げ込んできます。2人は学校長と徹底抗戦し、娘の母親と連絡をとり、ついに、娘を虐待から遠ざけ、母親のところに返すことに成功します。やがて、休暇が終わると、リディアはベルリンに戻り、クルトは一人残されました。1932年ナチスの勢力は増し、ビリーの歌うクラブもナチスの旗がひらめき、この夏の様な日々は二度と戻りませんでした。クルトはこの夏の物語を1冊の小説として出版し、数年後この地で亡くなったのでした。



グリプスホルム城

ドイツの風刺作家クルト・トゥホルスキーの書いた、自伝的な小説が原作で、主人公のクルトは作者自身の体験をもとに創作されています。クルトは、ドイツを愛し、ナチスの台頭によるドイツの変貌を憂いますが、ナチスの台頭に警鐘を鳴らすことにより、当局からの迫害が激しくなったことから、危険を感じた彼は、スウェーデンの城に逃避しました。起訴されて、すでにドイツに彼の居場所はなくなり、葛藤の中で、意欲をなくしていき、集まってきた旧友たちも、ベルリンやドイツ空軍へと帰っていきます。そのような一夏の経験が、耽美的に描かれた物語です。

クルトは、この体験を小説に書きましたが、3年後死亡。彼の葛藤は癒えることはなく、帰った3人はナチスの台頭の中で、それぞれの生活を送っていくことになります。それぞれを送り返すクルトが最後に描かれます。エピソードの一つで、アダの状況とも対比されています。アダは、厳しい寄宿学校から逃避。クルトはドイツから逃避します。その中で、最初はクルトの対応がおざなりに描かれますが、リディアが積極的に対応し、クルトも真剣になります。最終的にアダを勝ち取り、教条主義者から救うことになりますが、切れた学校長に、パレスティナに返れとも怒鳴られる始末です。

クルトの苦悩は深く、リディアからも攻撃されますが、彼の苦悩は解決するすべがありませんでした。長年ドイツを愛し、ジャーナリストとして深くドイツと付き合い、風刺作家としても体制批判をしてきました。1932年にナチスが政権をとり、ユダヤ人である彼は、どんどん居場所がなくなっていきました。その中でのあまりにも美しい一夏の逃避。友情、愛が幻想的に描かれている物語です。少し、小さくまとまった感じで、出口もない物語なので、パワー不足かなと思うところはありますが、事実は重く、かつ美しい友情と葛藤を描いた物語でした。

この小説は、1963年に、クルト・ホフマン監督により、当時の西ドイツで最初に映画化されています。クルト・トゥホルスキーは、ドイツでは記念切手にも登場する人物であり、著名人の一人のようです。1963年の映画ももし見る機会があれば見てみたいと思いました。

2019.11.9 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞

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「カリガリ博士」 ブルックナーの交響曲のサポートで

最初に寝落ちして以来、何度か途中まで見たことがあったのですが、まだ最後までたどり着いていません。ということで、今度こそはと意を決して見始めたわけです。今回見た映像は、なんとBGMがブルックナーだったので、音楽と映像と両方を楽しみながら見ることになりました。

あらすじ
若い男フランシスが語る、ある村で起こった不思議な事件。それはカーニバルの日、カリガリ博士の眠り男を使った出し物で、余命を訪ねた友人が、明日の朝までだと言われ、翌朝死体で見つかったというものだった。フランシスはカリガリ博士の周辺を調査し始めるが、さらに博士の魔の手はフランシスの恋人にも向かっていく…。



会話を交わす二人の男。その横を茫然と通り過ぎる一人の女性。若い方の男は、その女性が自分のフィアンセであると言い、二人が体験した奇妙な物語を語り始めました。

若者のフランシス(フリードリッヒ・フェーエル)は、友人のアラン(ハンス・ハインツ・フォン・トワルドウスキー)と、村にやって来たカーニバルを見に出かけます。二人はカリガリ博士(ヴェルナー・クラウス)という人物が主催する、眠り男チェザーレ(コンラート・ファイト)のショーに目をとめました。チェザーレは23年間から箱の中で眠り続けており、尋ねられればどんな質問にも答えられるとのことです。箱から出てきたチェザーレに、アランが「自分はあとどれくらい生きられるのか?」と尋ねたところ、チェザーレは「明日の夜明けまで」と答えました。翌朝フランシスは、村人からアランが何者かに殺されたことを知らされ、また村ではカリガリ博士を邪険にした役人がやはり殺されているという事を知りました。

フランシスは、彼の恋人ジェーン(リル・ダゴファー)とその父親(ルドルフ・レッティンゲル)と共に、カリガリ博士とチェザーレの調査を始めます。危険を感じた博士は、チェザーレにジェーンの殺害を命じ、チェザーレはジェーンの部屋に忍び込んでナイフをふりかざしますが、ジェーンの美貌に見とれチェザーレは気を失ったジェーンを抱きかかえて、彼女の家から連れ去りました。その様子を知った村人はチェザーレを追いかけ、その最中にチェザーレは心臓発作で命を落としてしまいます。一方で、フランシスは警官たちとともにカリガリ博士の見世物小屋に行き、チェザーレとの面会を強要しますが、博士は逃亡、精神病院へ逃げ込みました。フランシスはその病院でカリガリ博士のことを尋ね、院長室に行くと、なんと院長はカリガリ博士なのでした。

フランシスは、深夜に院長室に侵入。職員とともに、夢遊病者を使った殺人を犯した見世物師について書かれた書物を発見。その名もカリガリ。一行はさらにカリガリ博士の日記を発見し、博士が本の記述を再現しようとしていることを知りました。翌日、病院に運び込まれたチェザーレの死体と対面したカリガリ博士は、悲しみのあまり取り乱し、博士は職員たちに取り押さえられ、拘束衣を着せられて収容されます。そして、冒頭の場面に戻り、話し終わったフランシスは男と共に精神病院の中庭へと入っていきました。その風景は、登場人物総てが思い思いで過ごしている精神病院の光景。フランシスは院長のカリガリ博士が出てくると突然取り乱して暴れ、職員にとlリ抑えられて拘束衣を着せられてしまいます。そして、博士は自分ならフランシスを治療することができるとつぶやくのでした。

カリガリ博士

この映画に挑戦するのは、何度目になるかしらん。と思いつつ、意を決して見始めたのです。初回は、遥か昔のACTミニシアターで、数本ソ連映画を見た後の明け方の鑑賞で、完全に寝落ちしてしまいました。その後、何度かネットでトライしましたが、映像の古さと英語を追うのに疲れて、途中でやめてしまいました。今回はAmazon Primeでの鑑賞、字幕音楽付き。まず驚いたのは、音楽がブルックナーの交響曲第2番であったこと。この調子で始めれば、全曲いってしまうのでは?尺も同じぐらいだしと思っていたら、曲が少し早く終わり、再び第一楽章に戻ってきた…。

そんな訳で、ブルックナーのサポートで映画に入っていき、無事完走できたのですが、映画自体は結果として大変面白かったです。さすがに映像が古くて、かつかなり凝った映像なので、ちょっとわかりにくいのですが、この世界のシュールな舞台装置の造形。三角の扉とか、あまりにも現代絵画的な居住空間とか、とても面白かった。ここまで奇妙な世界の中で演じられる映画って、そんなにないと思いますし、ましてやまだ映画創成期のこの時代、当時の最新の美術と映画がマッチングした感じで画面に引き込まれていきました。

そして、ラストはしっかりどんでん返しが仕組まれていて、楽しみ的にも言うことなしでした。100年たっても古びることの無い、いい映画だったと思います。ストーリー構成として、カリガリ博士が拘束されても、冒頭のジェーンが彷徨っている原因がまだ解決されていないぞと思いながら見ていたのですが、しっかりそこは回収されていきました。見事です。という訳で、ブルックナーサポートで完走出来て、やっと一つの映画遺産を体験することができたので感謝です。

2019.4.28 HCMC自宅にて、Amazon Prime よりパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「ブリーダー」(2011独) グルジア山中の異様なできごと

ネットを眺めていて、ちょっと変な映画と言うことで紹介されていたブリーダーを買ってみました。話題に上るようなことの無い映画なのですが、何か面白いことがあるのではという期待です。2011年のドイツ/スイス制作の映画になります。

あらすじ
アメリカ人女性の、エイミーとソフィーは、ある日グルジアの田舎でハイキングの途中ではぐれてしまう。エイミーは怪しげな家に拉致されてしまい、エイミーを探すソフィーは、近くの小さな村で、決して親切と言えない地元の人々や国連軍の駐在者と接触していくが、そこでは他にも行方不明になった女性がいたことを知る…。



グルジアの山間部でハイキングを楽しむエイミーとソフィー。二人は山の中の湖畔にたどり着くと、奔放なエイミーは服を脱ぎ、泳ぎ始めました。ソフィーは戒律の厳しいこの地域で、村人に見つかれば大変なことになるとエイミーを諫めますが、彼女は聞く耳を持ちませんでした。そのあたりは地雷原の危険を表す看板や、じっと二人を見つめる怪しげな男がいました。男は英語が話せるようだったので、少し会話を交わしましたが、特に情報は得られません。見かねたソフィーはエイミーを置いて村の方に行ってみることにします。

村の不愛想な老人を訪ねましたが、よそ者と見るとガードが固く取り合ってくれません。しかし、一枚の女性の写真を渡されます。雰囲気からして尋ね人の様です。その頃エイミーは何者かに襲われ連れ去られてしまいます。怪しげな建物の中に囚われたエイミーは裸にされ縛り付けられて、拉致した男から優秀な子孫を残すために選ばれたと告げられます。抵抗もできないエイミーは、ただ恐れおののくことしかできませんでした。ソフィーはエイミーを探して村の外れにある国連軍の事務所を訪れ、事務所を守るアメリカ人の将校に出会います。彼に事情を話した後、その夜は村人のパーティーに参加することになりました。

パーティーには、最初に湖畔で会った男や、国連軍の将校など、関係者が勢ぞろいしていました。すっかり強い酒に酔ったソフィーは酔っぱらって部屋に帰りますが、忍び込んだ男がエイミーの行方を示唆するものを置いていきます。翌日情報を得たソフィーは国連軍の将校を訪ねますが、不在。そこに現れた英語を話す男を敵だと思い込んだソフィーは、彼の制止を振り切り、エイミーが閉じ込められている危険な家の方へ向かいます。そこには、エイミーと先に囚われていた写真の女性がいました。そして、国連軍の将校もいます。そして、追ってきたバイクの男も加わり、エイミーは誰が敵で誰が味方かわからないまま、混乱の中で解放に向けた戦いに巻き込まれていきました…。

ブリーダー

ネットで見ても、いい評価はあまり聞かないのですが、ちょっと怖いもの見たさで購入しました。まぁ、何を求めるかによりますが、それほど悪くないじゃない?というのが正直なところです。回収されず、意味不明のままというエピソードもあるのですが、最後はある程度納得し、ちょっと笑いが入りました。話の途中まで、グルジアの山村の、外界を拒絶したような頑な人々とうまく拘留できないソフィーが描かれていきます。英語が話せる人に安堵するソフィーですが、かえって深みにはまっていきます。

今回被害に遭うエミリーの方は、それまでの勝手な行動から、当然のように修羅場に導かれていきます。常識派のソフィーの方は、普通の行動をしているようで、それまでの行動には、かなり穴も隙も多い感じです。そもそも知らない危険のある土地で、単独行動する事が事件の発端ですし、まぁ親睦のためとはいえ、異常事態の時に、そこまで酔っ払うのもどうかと思います。

雰囲気の出し方はうまくいっていると思います。村人や国連将校の奇妙な視線や異常な反応、味方を敵だと思い、振り切って危険の中に飛び込んで行くところなどは、よくできているなと思いました。で結局はアメリカの田舎の代々続いた軍人一家の末裔の異常な思想が諸悪の根源ということですが、改めてチェックしてこれがアメリカ映画でないことを再確認。そりゃそうですよね。ここで起こることの真実味はあまりありませんが、なかなか面白い視点の映画だと思いました。

2019.2.3 自宅にてDVD鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

「帰ってきたヒトラー」 人間の社会の普遍的な問題を考えさせられる

異国の地にいると、最近の話題作をかなりの数、見逃しているのに気づきます。この映画もその一つで、特に無料動画ばかり追いかけていると、どうしても現れてこない映画なのです。かといって、日本のVODはほぼ接続にストレスを感じる、VNP経由でないと鑑賞できないわけで、なかなか有料動画を見る機会が無かったので、今回はITuneから選んで見ることにしました。たまたま200円のキャンペーン中で、この映画が出ていたので、見てみることにした次第。なんとなく内容は解っているのですが、ここは押さえておこうと見始めました。2015年、ドイツ制作の映画です。

あらすじ
ヒトラーの姿をした男(オリヴァー・マスッチ)が突如現在のドイツに現れる。リストラされたテレビ製作者ザヴァツキ(ファビアン・ブッシュ)に発見され、彼の復帰の足掛かりにと、撮影旅行を開始。全国を回って、現在のドイツの人々の声を聴いたヒトラーは、初めての生出演に成功、人々の心をつかむ演説を開始する。これは、ヒトラーを模した完成度の高い芸と見做され、彼は一躍人気者になり、天才的な活動家であった彼は現代のネット社会を利用し頭角を現していく…。



2014年、ヒトラーはベルリンにタイムスリップ、疲労で倒れ込んだところをキオスクの主人に助けられます。同じ頃、テレビ局をクビになったザヴァツキは、かつて撮影した映像にヒトラーに似た男が映り込んでいるのを発見し、彼を捕まえ、テレビ局復帰のためヒトラーとともに全国行脚し、自主動画を撮り溜めました。ザヴァツキは動画を手土産に、テレビ局の新局長ベリーニ(カッチャ・リーマン)に売り込みテレビ会社に復職、さっそくヒトラーは生出演することになります。そこでヒトラーは持ち前の弁舌で視聴者の人気を集め、一躍人気者となりました。

しかし「ヒトラーネタ」で視聴率を集めるベリーニに反発するスタッフが現れ始め、局長の地位を狙う副局長のゼンゼンブリンク(クリストフ・マリア・ヘルプスト)はベリーニを失脚させるため、ヒトラーのスキャンダルを見つけ出し、トーク番組中にその映像を放映、視聴者からの批判により、ヒトラーは降板、ベリーニもテレビ局をクビになってしまいました。ザヴァツキの家に居候することになったヒトラーは、自身の復活を「帰ってきたヒトラー」として出版、これがベストセラーとなって、ザヴァツキとベリーニで組んで映画化を企画し、一方でヒトラーを失ったテレビ局は視聴率が急降下、新局長となったゼンゼンブリンクは立て直しのため。映画製作への出資を申し出るはめに。

ザヴァツキは恋人のクレマイヤー(フランツィスカ・ウルフ)の家にヒトラーと共に招待されますが、ユダヤ人であるクレマイヤーの認知症の祖母(グドルーン・リッター)がヒトラーをみて拒絶反応。クレマイヤーがユダヤ人だと知った時のヒトラーの反応を見たザヴァツキは疑念を抱き、ヒトラーの復活の秘密を探り、芸人などではなく、本物だと確信します。ザヴァツキはベリーニに真実を伝えようとしますが相手にされず、精神を病んだと判断されて病院に幽閉され、映画がクランクアップした頃、ヒトラーは自身を支持する若者を集めて新しい親衛隊を組織し、再び野望の実現のために動き出すのでした…。

帰ってきたヒトラー

あらかじめ大筋は理解していましたので、予想通りの内容でした。主義主張のはっきりした映画であったと思います。内容の性格から、ちょっと説明的過ぎと思うところも無きにしも非ずですが、こういった内容ですから誤解を招くようなものであってはならないという事でしょう。ヒトラーが台頭していく姿の現在における再現という事で、現在のヒトラーが誕生する可能性、あるいはすでに誕生しつつあることに警鐘を鳴らしつつ、世の中、歴史上の普遍的な内容をしっかりと表現していると思いました。

衆愚政治という言葉を最初に習ったのが、高校の世界史の授業。都市国家アテネの項目です。史上初の民主国家が陥る罠がありました。ワイマール共和国から独裁体制への移行など、選挙で国民の信頼を得るというお墨付きに頼り、安住し、あるいは利用される世界、これは現在の日本をはじめとする世界中の民主国家に起こりえる罠でもあります。現在の成熟した国家は、いろいろな機構を組み込み、そういった危機に陥ることを避けるように体制が構築されていますが、さりとて絶対ではなく、どこにでも起こりえること捉えるべきなのでしょう。

最後の方に出てくる、国民が心の底で共感していることに気づく、であるとか、悪いことばかりでなく、いいこともあったとどこかで思っているというのも、言われてみればその通りで、犯罪者にもいいところがあったというのは捕らえようによっては言える話、植民地支配には良いところもあったというのも、よく言われる話、良いところもあるが悪いものは悪いと言い切るかどうかが、結局は議論の分かれ目のような感じがします。日本の場合は、ヒトラーやムッソリーニといった強力な指導者に帰すものでもなく、全体が持ちつ持たれつという、実行者の責任をはっきりさせない体制なので、話はややこしく、これは現在の大企業でも同様なことが言えるのかもしれません。

といったところで、この映画はヒトラーという存在から、それに限らず人間の社会の在り方のいろいろな問題について考えさせてくれるいい作品だと思いました。

2018.7.1 HCMC 自宅にて、ITuneでの パソコン鑑賞

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ジャンル : 映画

「命をつなぐバイオリン」 <WUNDERKINDER>とセンス無い邦題

ネットで検索しつつ、見ることのできた戦争ドラマ。題名を見る限りはそれほど興味をそそられるものではなかったのですが、こういう映画もしばらく見てないなと思い、見始めました。現在でも毎年のように作られ続けている、ナチスのホロコーストに関連するドラマです。これは、映画鑑賞一時中断直前の昨年11月の鑑賞です。

あらすじ
1941年、ソ連の支配下のウクライナに、神童と呼ばれた二人のユダヤ人の子供がいた。アブラ―シャ(エリン・コレフ)はバイオリン、ラリッサ(イーモゲン・ブレル)はピアノで人々を魅了。ソ連の幹部たちは二人の演奏を、党の体制の賜物と宣伝する。同じ町に住むドイツ人少女ハンナ(マティルダ・アダミック)もバイオリンの才能に恵まれ、アブラ―シャやラリッサと一緒にレッスンを受けたいと、二人の音楽教師でユダヤ人のイリーナ(グドルン・ランドグレーベ)の元で一緒にレッスンを始め、3人は固い友情で結ばれていく。やがて、ドイツ軍のソ連侵攻が開始、ナチスのシュヴァルトウ大佐(コンスタンティン・ヴェッカー)は、完璧な演奏を行えば、アブラ―シャとラリッサを特別待遇として強制収容所送りを免除してやると2人に伝えるが…。



冒頭は、現在の情景から。コンサート会場で演奏を終えたヴァイオリニストに突然に来客が現れます。それは、かつて彼女と固い友情で結ばれていた男性でした。そして、時代は1941年のウクライナに戻りました。

1941年、ソ連支配下のウクライナのポルタヴァのコンサート会場。アブラ―シャとラリッサは、素晴らしい演奏を披露し、観客の中には素晴らしい演奏に目を輝かせている幼いハンナがいました。演奏会では2人の素晴らしい演奏のあと、ソ連の幹部たちが登場し、二人が完璧な演奏をすることができるのは、自分たちの党の体制のおかげだと、宣伝を披露します。ハンナは国や民族など意に介さず、しきりに2人に近づきたがるようになりました。裕福なハンナ一家と、貧しい2人の間には大きな壁がありましたが、ハンナの積極的なアタックにお互いに友情が芽生え、やがて、3人は同じ教師の元でレッスンを受けるようになります。

ハンナ一家は、ドイツから入植し、工場を経営していました。当時ソ連とドイツは不可侵条約を結んで友好関係にあり、ウクライナはソ連支配下で、地元のウクライナ人はソ連の命令に従いつつ、ハンナ一家も優遇していました。しかし、ドイツが条約を破棄して宣戦布告したことから情勢は一変。いろいろと世話をやいてくれた、ウクライナの政府からもハンナ一家は手のひらを返したように攻撃を受けるようになり、家をも追われた一家は、アブラ―シャたちユダヤ人のコミュニティーに助けられ、身を隠すことになります。そこへドイツの占領軍が到着。ハンナ一家の待遇は再び一変しますが、今度は彼らを助けてくれたユダヤ人のコミュニティー、そして固い友情で結ばれた2人に次々と危機が訪れ、目につく者は皆収容所に送られるという事態となってしまいました。

固い絆で結ばれた、アブラ―シャ、ラリッサ、ハンナの3人は、友情の曲を作曲、大人たちとは無関係だと誓い合いますが、ナチスのユダヤ人狩りの手は、2人にも向かってきます。ハンナ一家は、二人が神童であり、対象から外すよう、この地を取り仕切るシュヴァルトウ大佐(コンスタンティン・ヴェッカー)に要請しますが、彼は、ヒムラーの誕生祝賀会で完璧な演奏を行えば、アブラ―シャとラリッサを特別待遇として強制収容所送りを免除してやると答え、ついに運命のコンサートの幕が上がりました…。

命をつなぐバイオリン

かなり重厚な、ホロコースト関連の映画でした。情勢や戦況が変わる中で、二転三転するハンナ一家の運命を追うと、この時代におけるウクライナと、そこに住む人々の立場のむつかしさや、処世術が前面に出てきて、厚みのある歴史ドラマになっていると思います。いろいろな人々に助けられながら生き抜いていた、入植したドイツ人の話は、これで一つの大きな主題であり、良く語られていると思いました。

そして、この物語の最大のテーマは、アブラ―シャとラリッサ、そしてユダヤ人コミュニティの運命でした。混乱する大人の世界の中で、音楽の神童として苦悩し生き抜いていく。そして、それを身を挺して助ける教師のイリーナ。戦禍の中でも固い絆で結ばれる、ハンナとの友情。そういったことが骨太でかつ丁寧に語られていきます。原題の通り、これは神童たちの物語であり、また、ナチス侵攻前後のウクライナの情勢を描いた歴史ドラマでした。

残念ながら、邦題の「命をつなぐバイオリン」という題名からは、この映画にとっては、ちょっとずれた期待を持って映画を見せてしまうような気がします。主題をそこだと絞ってみる形になってしまうと、ラストがどうなるかという興味が先に立ってしまい、丁寧に語られる歴史劇もまどろっこしく感じてしまいました。前半を大きな背景として歴史を見せて、重厚な物語にしているのに、興味は命をつなぐかどうかの、演奏会のみに向かってしまう。それに題名にバイオリンしか出てこないというのは、、ある意味ネタバレをしているようなもの。そういう意味でこの題名は内容を表してはいますが、映画の意図を消し去ってしまうという残念なものだと思いました。まぁ、題名に影響されずに見ろと言われるとそれまでですが、それはちょっと難しいですよね。

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プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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