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「Baba Yaga: Terror of the Dark Forest (2020)」 バーバ・ヤガーの伝承によるロシアホラー

この映画は、たぶん少し前に上映予定のものが、コロナ影響で延びたものと思います。当地では、今週上映の中でも目玉でした。主だった作品が延期になる中で、躍り出た形でしょう。監督は、ズヴィヤトスラフ・ポドゲイフスキー。「ミラーズ 呪怨鏡」を作った監督ですね。2020年の映画で、ロシア語音声で英語字幕の鑑賞です。

あらすじ
大都市の郊外に引っ越してきた、イゴール(Oleg Chugunov)は、母を亡くし、父アレクセイ(アレクセイ・ロズィン)と、継母のユリヤ(マリアナ・スピヴァク)、そして生まれたばかりの妹の家族で暮らしていました。イゴールは学校で気になったダーシャ(Glafira Golubeva)に声をかけますが、ダーシャには、アントン(Artyom Zhigulin)たち不良グループが絡んでおり、さっそく諍いが起こります。一方、イゴールの家ではナニーのタチアナ(スヴェトラーナ・ウスティノヴァ)を雇いますが、彼女と娘の周りで奇怪な現象が起き始め、イゴールはそれに気づいて両親に伝えますが、タチアナを信頼している両親は相手にしませんでした。

ある日、イゴールが家に帰ると、タチアナと妹が消えており、両親は奇妙な状態に見え、かつ自分たちに娘がいたことを覚えていない様子です。イゴールは、ダーシャとアントンと共に、以前喧嘩の末に迷い込んだ森の中に向かい、浮浪者風の男が住むあばら家を訪ね、男を問い詰めると、かつて男の娘が失踪し、今でもその娘を探していること。そして、娘が自分の記憶から消滅しないようにしていることを聞きます。そして、イゴールたちは、以然見つけた森の中にある高床式の小屋に行き、不思議なダクトの中に入っていきました。そして、その奥で男の娘と出会います。

子供たちを攫っていたのは、バーバ・ヤガー(=タチアナ)でした。子供たちを攫い、親から記憶を消していたのです。そして、イゴールは妹をみつけると、そこが自分たちのいる世界では無いと気づき、妹を連れて元の世界へ戻ります。継母に会ってみると、存在が忘れらている妹は消えてしまっており、イゴールの存在すらあやふやになっていました。イゴールは向こうの世界で見つけた、母の編んだ毛糸の靴下をみせて、母の記憶を呼び戻そうとします。そして、再び向こう側の世界に戻ると、妹を見つけ、バーバ・ヤガーと対決し、勝利を収めて元の世界に戻ってきました。イゴールは妹を父母の元に連れ帰り、ダーシャの母も、娘の存在に気づいて抱擁を交わすのでした



Yaga. Koshmar tyomnogo lesa (2020)

スラブ民族の伝承として伝わるバーバ・ヤガーを題材としたお話です。ムソルグスキーの音楽でも有名ですね。鶏の足の上に立つ小屋に住んでいるとされていますが、この映画では、高床式の小屋が、バーバ・ヤガーの住む世界への入り口になっています。バーバ・ヤガーは森の中に住み、人間の子供を食べる魔女ですが、この映画ではやはり人間の子供を攫い、自分の世界へ連れていき、親の記憶から消すと、子供の姿も消滅してしまうという形になっています。ナニーとなってイゴールの家庭に侵入し、怪奇現象を起こします。片足が義足の姿でも登場しますが、最後は毛糸玉の怪物になっていました。

ストーリー展開もしっかりしていると思いましたが、ロシア語で英語字幕という環境で、けっこう見落とし、勘違いが多いと思います。英語字幕は、やはり自分は読み取りが遅くて、文末までにたどり着かないうちに消えてしまうのです。でもまぁ、何とか理解し楽しんだ範囲で書いています。ホラー度は、音で驚かせるところは度々ありますが、それほど高くありません。むしろ、家族のドラマであり、亡き母の幻影を見せてイゴールを引きk揉もうとしたりします。また、親から子供の記憶が消える瞬間が表現されたりと、そういった家族とのつながりや、記憶をテーマにした、寂しげな趣も持っている作品だと思いました。

この映画は、少年少女の冒険映画的な要素も持っていると思います。アントンはラブレスに出演していた少年のようですが、流石に覚えていません。大人で目立つのは、出番の多い、父や継母よりも、ダーシャの母とか、バーバ・ヤガー(ナニー)とか、不思議な美しさがあって、目立ちました。ちょっと変わった雰囲気の役者さんが多かったように思いました。演出かもしれませんが。ロシアの伝承を元にした、ホラーであり、ドラマということで、一風変わった雰囲気が楽しめた映画でした。

2020.5.23 HCMC CGV Vincom Dong Khoi にて鑑賞
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ジャンル : 映画

「ザ・コレクター」 あまりに芸が細かくて一見では理解不能

新しくAmazon特典に出ていたロシア・ホラーです。特に予備知識なく、ロシアホラー面白そう…ということで見始めましたが、疑問なところが多く、何度も見返す羽目に。これができるのもVODならではです。2016年のロシア映画で、監督はティホン・コルネエフでした。

あらすじ
この映画は、①地下鉄の乗客の話と、②数日後に捜索に行った友人の話が、交互に、短く、同じエリアで進行するので、見ている方は何が何だかわからなくなります。それを解くのが醍醐味なのですが、ここではある程度まとめて解りやすく書きます。

①モスクワの地下鉄が、終点を通過してしまい、トンネルの中で停車。最後尾の車両に乗っていた6人は車両から降りて出口を求めて彷徨い始めます。
②同じ地下鉄で、先に下車したカップルのアルテム(ロマン・エフドキーモフ)とレナ(Alena Savastova)は、別れた友達が戻ってこないため、地下に詳しいというエゴール(Andrey Levin)という地下探検家に同行を頼み捜索に出かけます。エゴールの兄も地下を探検するのが好きで、子供といつも地下に入っていたのですが、戻らなくなってしまったとのこと。また、地下はかつて秘密の原発があり、放射能レベルが高いとのことでした。3人は地下を進むうちに、血の付いたクリスマスツリーを発見。その先で何やらオカルトのテレビ撮影の現場に出くわしましたが、そこで怪物に襲われ、テレビのクルーはマックス一人を除いて全員殺されてしまいます。

①6人は地下を進むうちに、徐々にパニックになり、また周囲に怪物がうごめき始め、パニックになったコスプレ少女や、怪物に殺され、一人一人死んでいきます。残ったのはローマ(Vladimir Kuznetsov)とダーシャ(アンナ・ヴァシーリエヴァ)のカップルで、後から捜索に来る2人の友人です。ローマは怪物が迫り来る中で、必死にダーシャにプロポーズしますが、ダーシャはあなたは愛していない。私の愛しているのはアルテムと言い、その後ローマは怪物に殺されます。
②捜索の3人+マックスはトンネルの奥に放置された地下鉄の廃車にたどり着くと、エゴールは3人を車両に乗せ閉じ込めます。マックスはしきりにヤシャは以前のヤシャでは無いといい、外ではエゴールが兄のヤシャは地下鉄の乗客やテレビクルーの殺戮を行い、おかしくなってしまった。もう庇いきれないかもしれないとつぶやきます。そこに怪物が現れたので、エゴールはランチタイムと言いながら扉を解放しますが、怪物はエゴールを殺してしまい、3人は逃げ出します。

①一人になったダーシャは、光差すトンネルからの出口でエゴールと出会い、助けを求めます。しかし、ダーシャはエゴールに襲われ、怪物とエゴールに引きずられて連れ去られます。
②3人は線路沿いに歩くと駅が見えてきました、途中で「ダーシャがいる」というマックスに、レナは無視して駅に向かおうと言います。その時、レナは物陰から出てきた怪物刺されてしまい、レナは虫の息で、ダーシャは小さい時から私のものを横取りしてきたと言い、息絶えます。マックスはアルテムにダーシャいる方向を示し駅に向かうと、アルテムはダーシャを探そうと歩きだします。

①傍らで怪物が人肉を切り刻んでいる、死体の山の中で気が付いたダーシャは、ひっそりと逃げだしますが、途中で小さな怪物に出会い、黒い霧を吹きかけられでせき込みます。気づいた大きい方の怪物にダーシャは追われます。
②アルテムは怪物を見つけると、慌てて逃げ出します。
①②の映像がシンクロしていきます。アルテムもダーシャも怪物に追われ、クリスマスツリーの前に追い詰められます。

①追い詰められたダーシャは、目の前に迫る怪物を、落ちていた尖ったクリスマスの飾りのような物で刺し殺します。そして、トンネルの入り口まで辿り着きましたが、光に耐えられず転落し、ダーシャの顔が変化し始めるのでした。
②追い詰められたアルテムは、目の前の怪物が、愛おしくアルテムに触れるのを感じ、ダーシャ…と呼びかけます。画面は暗転し、黒い霧を吐く音とアルテムのせき込む音が聞こえました。



ザ・コレクター

一度見ただけでは、何が言いたいのか解りませんでした。それで、もう一回要所要所を何度も見てみることになりました。VODだからこそ、手軽に見返すとこができます。正直言って、この映画はわざと解りづらくしているように感じました。パズルみたいです。おまけに芸が細かいので、字幕鑑賞だと、字幕と画面の変化を両方追うのがつらいのでした。

2組のダンジョンへの侵入者の話が交互に映されますが、この2つは日が数日ずれているという前提で話が進んでいきます。しかし、同じダンジョンで、登場人物も重複しているので、見ているとかなり混乱してしまいました。おまけに、ラストでは、別の日の2つの追っかけっこが、同じ場所でシンクロして映されている手の込んだことをしています。服や髪の色が似ていて、これもわかりづらい。(そこまで理解していれば、このシンクロは逆にヒントになるかもしれません)

ということで、面白い仕掛けだなと何度も見てようやく納得しました。ダーシャの手のひらの入れ墨が、怪物になってかすかに見えているのは感動しました。でも、そうと思って、じっくり見ないと判らないかも。結局は、時間差のマジックにひっかかったので、思い切り作者の意図にはまったかもしれません。しかし、ここまで見返さないといけないとなると、果たして劇場で見る映画としては、ちょっと辛いという気がします。

地下鉄の中の事件という事なのか、麻原彰晃やオウム真理教という言葉が劇中で出てきますが、時の流れは早いなと思いました。 オウムはロシアにも支部があったようですから、知られているのでしょうか。

2020.4.10 HCMC自宅にてAmazonPrimeよりのパソコン鑑賞

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「ミラーズ 呪怨鏡」 オーソドックスな悪霊物のロシア映画

いろいろな映画を目についたものから見ていたのですが、これはロシア産ホラー映画という事で、少々興味をそそられたというもの。ちょっと雰囲気に期待です。2015年の映画で、監督は、ズヴィヤトスラフ・ポドゲイフスキー。2016年のポルト国際映画祭(ファンタスポルト)で、作品賞ノミネートのほか、審査員特別賞を受賞しています。こういった映画は見ておきたいなという感じです。(ちなみにこの年の受賞作は、「ゆれる人魚」でした。)

あらすじ
ロシアのある町で、4人の子供たちが集まり、怪談話に熱中していました。それは、カーチャ(ヴァレリヤ・ドミトリエヴァ)が仕入れた「スペードの女王」という悪霊を呼び出す話。呼び出した男の子は、鏡の中に黒いドレスの女性を見るようになり、やがて死んでしまったということです。マトヴェイ(Valentin Sadiki)の提案で、実際に呼び出してみようと言うことになり、嫌がるアーニャ(アリナ・ババク)を説き伏せて儀式を開始。それをセリョージャ(セルゲイ・ポホダーエフ)がカメラにおさめます。そしてアーニャが呪文を唱えると、物音が聞こえ、クローゼットの扉が開いたのでした。これを期に異変が起こり始めます。まずマトヴェイが、カーチャの話と同じように亡くなってしまい、アーニャの父アントン(イゴール・クリプノフ)は、離婚してアーニャと二人で暮らしている元妻のマリーナ(エフゲーニャ・ローザ)から一部始終の連絡を受け、二人の住むアパートに向かいました。

セリョージャはSNSでスペードの女王に詳しい男性と相談し、彼女の望みをかなえることと、鏡は見ないほうがいいとアドバイスされ、家にある鏡を布で覆います。アントンは子供たちの妄想だろうと考えていましたが、自身も奇妙な体験をし、マトヴェイを検視した医師から、死因に不可解な部分があったことを聞くと、セリョージャの撮影したビデオを見ることにします。そして、鏡の中のアーニャが、不可解な動きをしているのを発見。スペードの女王の望みを聞くことにしました。そして、それはアーニャに乗り移るという事でした。セリョージャも怪死してしまい、アントンは自分のアパートに皆を移します。そして、アントンはセリョージャのパソコンから、専門家に連絡を取ると、関わりたくないと通信を切る相手の家に押しかけ、その男スミルノフ(ヴィラディミール・セレズニョフ)は、スペードの女王に関する出来事を話し始めました。

19世紀の終わりごろ、孤児院を開いた没落貴族の女は、金を手に入れると子どもたちを浴槽に沈めて殺すことを繰り返していました。19人まで殺したとき、女の犯罪が発覚。舌を切られ、髪を剃られて生き埋めにされます。以後、剃髪した黒衣の女が目撃されるようになったのでした。そして、スミルノフの息子もスペードの女王に殺されたひとりだったのでした。アントンに懇願され、しぶしぶ協力することにしたスミルノフは、霊感の高いカナリアを連れ、アントン宅に向かいます。そして、ちょうど襲われそうになっていたアーニャを二人が助け、アーニャの指輪が目印になっているとして、ペンチで指輪を切断しました。そして、悪霊の写真を撮った二人は現像を始めます。

映し出されたのは、黒い服の女で、スミルノフは前と同じ儀式を繰り返して指輪を返せば、魂が解放されるのではないかと提案します。アーニャとカーチャが一緒に儀式をすると、カナリアが死に、電燈が点滅し扉が閉まりました。触手がアーニャを襲いますが、カーチャが指輪を窓の外に投げると触手は消えてしまいます。呪いは解けたと考え、アントンは、スミルノフを送っていくことにしますが、途中エンジントラブルに見舞われ、指輪が落ちているのを発見。呪いが解けていないと悟り家に引き返しました。その頃アーニャが突然カーチャを襲い始めました。アーニャは、帰ってきたマリーナとカーチャに押さえつけられ、拘束されて入院。戻ったアントンとスミルノフは、取りつかれたアーニャを取り返すために病院に潜入。呪いの言葉を叫ぶアーニャを臨死状態に陥らせ、悪霊が出てくるところを、そばに置いたネズミに移し、その後にアーニャを蘇生させることを計画します。しかし、アーニャは心停止しても、なかなか悪霊は出てこず、時間的にも限界に達した時、アントンが自分を犠牲にしようと近寄ってスペードの女王を誘うと、アントンは宙に浮きます。スミルノフが、さらに誘うとこんどはスミルノフに悪霊が移り、スミルノフは悪霊を体内で押さえこんだままアーニャを蘇生させ、アントン、マリーナ、アーニャを立ち去らせると、自分に毒を注射して自殺したのでした。

後日、アントンの家に現れたセールスレディが、あの指輪をしているのを見て、アントンは思わず「捨てろ」とアドバイスしますが、女性にむっとされます。そして部屋に戻ったアントンは不安になり、鏡を思わず振り返えるのでした。



ミラーズ 呪怨鏡

なかなか雰囲気がいいホラーで、ゆったりと進んでいきます。そして、この雰囲気になじんでしまえば、いい時間が過ごせたと思います。4人の子供たちが、自分たちで行った儀式で呼び起こした悪霊に取り付けれ、一人一人殺されていく。でも、殺されるのは男の子だけで、じゃあ、ヒーロー役はというと、離婚して家を離れた少女の元お父さんというところが、ちょっとしたホームドラマ的な味わいも加味されていました。

悪霊は憑依するので、アーニャがリンダ・ブレア相当で、スミルノフが、悪魔祓いの神父相当ということになりますが、迫力とかはエクソシストの方が遥か上を行っていますので、比較してしまうと見劣りします。しかし、厳寒のロシアを舞台に凍みわたるような情感と恐怖という意味で、このホラーの雰囲気はかなり気に入りました。

アントン役のイゴール・クリフノフが、なかなかいい味を出していると思います。あと、お母さん役のエフゲーニャ・ローザがなかなか美人でした。悪霊の造形はあまりはっきりとはしませんでしたが、まずまずなのでは…。ラストは思わせぶりなものでありきたりではありますが、逆に言えば何も示してはいません。都市伝説的な物でもあり、終わりはないのでしょうけどね…。

2019.9.25 HCMC自宅にてパソコン鑑賞

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「ラブレス」 初冬のロシアでの捜索の緊張感と破綻した夫婦

スピャギンツェフの作品、しばらく見ていませんでしたが、新作出ていたのですね。気づきませんでした。評判につられて「父、帰る」を見たのは2004年。それから「Leviathan」まで飛びました。今回はそれ以来です。前作の雰囲気はかなり気に入っているので楽しみです。2017年のロシア映画で、カンヌ映画祭では審査員賞を受賞しました。

あらすじ
12歳のアレクセイ(マトヴェイ・ノヴィコフ)のは、両親に一流企業で働く父のボリス(アレクセイ・ロズィン)と高級エステで働く母のジェーニャ(マルヤーナ・スピヴァク)を持ち、マンションで暮らしていまし、既に両親はそれぞれ不倫相手を持ち、夫婦関係は破綻して、離婚協議中でした。ボリスには若い恋人マーシャ(マリーナ・ヴァシリイェーヴァ)は既に妊娠中で、一方ジェーニャにも年上の裕福な恋人アントン(アンドリス・ケイシス)がいました。諍いの絶えない二人は、さっさと離婚し新しい生活を始めたいと思っていますが、問題はどちらがアレクセイを引き取るか。双方とも引き取りたがらず押し付け合います。顔を合わせるたびに激しい口論を繰り返し、アレクセイはその様子を泣きながら耳にしていました。

ある日、アントンの家から夜遅く帰宅したジェーニャは、翌朝学校からアレクセイが2日も学校に来ていないとのことを知らされ、ボリスに連絡しますが、最後にいつ会ったかも曖昧で、警察に相談しても取り合ってくれず、市民ボランティアに協力を依頼します。コーディネーター(アレクセイ・ファティフ)は沢山のボランティア救助隊を動員してアレクセイの捜索を開始。父母も捜索隊とともに捜索に加わりました。訪ねたジェーニャの母親からは、別れて中絶しろと忠告したのにと怒鳴られ、帰りの車中でも口論になり、ボリスはジェーニャを車から放り出し、置き去りにします。

アレクセイの捜索は、手がかりをたどって進めていきましたが、アレクセイの上着を見つけただけで一向に進展せず、雪の降る中で不安は増していきました。そんな中で、警察よりの連絡で訪れたのは死体安置所でした。身元不明の少年の遺体の確認をした瞬間、泣き崩れるジェーニャ。遺体はアレクセイではないと言い張ります。ジェーニャはボリスに当たりますが、ボリスも泣き崩れます。数年後、ボリスはマーシャとの幼い我が子を無造作に扱い、ジェーニャもまた抜け殻のようにアントンと過ごしていました。テレビではウクライナの市民暴動を鎮圧する様子が流れ、元夫婦は新しいパートナーと抜け殻のように生活を続けていたのでした。



ラブレス

久しぶりのズビャギンツェフの鑑賞でした。前回はLEVIATHANで、暗く救われない話でしたが、ただただ大自然の力強さに感じ入りました。今回もまた救われない話。父と母の徹底した憎悪の中での子供。この子供にはもう行き場がありません。捜査活動中も、お互いの新しいパートナーと生活する二人。父にはすでに妊娠後期の若いパートナーがいる状況です。母親も毎日ベッドでパートナーと暮らしています。アレクセイの居場所はもうどこにもないという状況をどんどん突き詰めていきました。

安置所の遺体はアレクセイだと明確に説明されません。しかし、雪の降る季節で、これだけ長い間どこにも現れない子供は、やはり絶望的とも言えるので、安置所での確認結果はどちらでも同じ状況ではあります。ただ、父母は明確に答えられなっかただけ、と解釈します。アレクセイは、父母のそれぞれのパートナーとの様子は、詳しくは知らされてなかったかもしれませんが、どちらも引き取ってはくれないことは感じ取っていたのでしょう。

この映画を観ていると極度に人間不信になってしまいます。愛だの恋だのといろいろ語りながらも、人間の本質は変わらない。一時燃えることがあっても、この二人は結局新しいパートナーとの円満な家庭は築けないエゴイストなのでした。最後にウクライナ紛争と、そしてルームランナーで走る母親のジャージはロシアチームのもの。ウクライナをいじり倒して、一人飄々とルームランナーを駆けているのが、ロシアということになりますか。終始ゆっくりした展開ながら、緊張感をひと時も切らせない力強さが素晴らしい映画でした。久しぶりの重い映画に、ずっと見入ってしまいました。

2020.02.23 HCMC自宅にてAmazon Primeよりのパソコン鑑賞

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「神聖なる一族24人の娘たち」 諧謔的で幻想的な挿話集

以前に、Amazon Primeで見つけて、ウォッチリストに温めてあった映画です。こういう映画は興味を引くのですが、とっつきにくい感じもして、しばらく見ませんでした。でも、ウォッチリストに入れておけば、いつか見たい時がやってくるので便利です。アレクセイ・フェドルチェンコ監督による2012年のロシア映画です。

あらすじ
ロシアのヴォルガ川流域に住むマリ人の物語。全体を通した明確なあらすじは無く、24人のOで始まる女性の短いエピソードが連綿と続いていく構成となっています。マリ人たちの土着の自然信仰を背景に、生活のいろいろな場面での、生と性・そして死に関する短いエピソードです。

理想的な夫を選ぶ目を養うため、キノコの形を丹念に調べるオシュチレーチェ。小枝のようにか細いオシャニクを豊満な身体にするため、裸の体を布で拭くオカナイおばさん。夫の股間の匂いを嗅ぐことで浮気の確証を得ようとするオーニャ。夫に想いを寄せる醜い森の精霊から呪いをかけられるオロプチー。男の亡霊たちに乗せられて、裸で踊る姉たちを目撃する少女オルマルチェ。エピソードは次々と続き、村人たちの暮らしは連綿と続いていきます。



神聖なる一族24人の娘たち

ロシアのマリ人の女性を中心として、性と生と死にまつわるエピソードを集めた映画です。24人のおOで始まる女性にまつわる、24のエピソードで構成され、一つ一つが独特のユーモアのある語り口で表現されていきます。そういった内容から、あたかも人生の機微を語るショートショートのジョーク集を読むような感じで、次はどんな話だろうかと期待しながら次々と物語が展開していきました。ごく短いものもあれば、少し長いものもありで、様々なお話が詰まっています。

ストーリー性があって面白かったのは、ゾンビ自分を袖にした女性の元に遣わすお話。当たり前に笑えるオチがあるのは、男の浮気を確かめるため股間の臭いをかぐお話。そのほか、そういった落ちがあったりなかったり、あるいは幻想的であったり、悲惨なものであったりと、日常の中で女性にまつわる、あらゆることが盛り込まれている感じでした。短いものではキノコを選ぶエピソードも面白いですが、おもちゃみたいにしっかりしたものなので、あのあたりのキノコはこういうものなのかな?と思いました。小さいのはすぐにリジェクトされました(笑)。

死については、女性の死もありますが、この映画で死んでいる(あるいは死ぬ)のは、だいたい男性のようですね。ゾンビになったり、亡霊になったり、いきなり殺されたりと…。どうも、女性は生と性を謳歌し、男性は女性の為に生きているんですよと言っているようでした。

2019.10.29 HCMC自宅にて Amazon Prime よりのパソコン鑑賞

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「草原の実験」 美しい草原と少女の生活と映像、そして終末

この映画が公開されたころ、チラシを見つつこれは好きなタイプの映画だと思い気になっていましたが、結局行けずじまいでした。エレーナ・アンの姿や、予告編で見る美しい映像が心に残っていました。そして、AmazonのPrime特典に入っているのを発見、早速チェックしたということです。2014年のロシアの映画です。

あらすじ
広大な草原の中の一軒の小さな家で暮らす父親と少女。そこには、毎日変わらぬ幸福な暮らしがあった。少女の幼馴染の少年と、この地にやってきた異国の青年の間で、少女を巡る争いが始まり、勝者との幸せな暮らしが始まった時、…。



大草原に住む父(カリーム・パカチャコーフ)と娘(エレーナ・アン)がいました。昼間、父はトラックの荷台で、羊と一緒に眠っています。娘は、帰ってきた父の足を洗い、壁によりかかって眠る父の頭に、そっと布を当てています。毎日、父とトラックに乗り、いつもの場所で降りると、青年(ナリンマン・ベクブラートフーアレシェフ)が馬に乗ってやってきて、娘を乗せ家まで送ります。そんな毎日が広大な草原で続いていました。

ある日、オーバーヒートした車から一人の青年(ダニーラ・ラッソマーヒン)がバケツを持って近づいてきます。娘に水をもらった青年は、ディーナをカメラで撮りました。しばらくして、夜中に青年がやってきて、家の壁に娘の写真を映写し、スライドを娘に渡しました。翌朝、娘はいつになく笑顔になっていました。ある土砂降りの夜、父は銃を持った兵士に囲まれ、服を脱がされて検査されます。すると放射能の探知機が激しく反応。兵士は家の中も調べにきますが、娘は隠れ続けました。

青年2人は、娘を巡って争うようになります。父は、病に倒れ病院に入院しますが、ある夕方突然父が帰宅。そして朝日が昇った頃、父は土の上にゆっくりと斃れ、娘は父を埋め墓を建てます。娘は荷物をまとめ家を出て、トラックを運転していきましたが、途中から柵で仕切られて進むことができまくなりました。家に戻ると、青年が2人。2人の決闘が始まり、勝ち残った青年は娘と結ばれます。静かな一日、2人は家の前のベンチであやとりをずっとしていました。

遠くの草原で、核爆発が起こり、馬たちが逃げ出し、爆煙が押し寄せてきます。2人は手をつなぎ、核爆発は全てを飲み込んでいきました。

草原の実験

広大な草原の中での生活。美しい風景。美少女。ものすごいスローライフ。屈強な父。三角関係。少女から大人に変わる時代を、美しい画像でつづった作品でした。公開当時、見に行こうとしていましたが、セリフ無しとの事で最後まで耐えられるか不安で、結局行かなかったのです。この映画は、映像で語るのみですが、かなりアートでかつ雄弁な映像なので、自然と引き込まれていきます。限定された登場人物で、込み入った行動も無く、一つ一つの行動・表情がセリフとなって、解りやすく表現されています。

やはり、青空のどこまでも続く草原の映像が素晴らしい。また、2人の洗濯物が絡み合うシーンとか、相当に微笑ましい構図でした。そして、ほとんどの場面に登場するエレーナ・アンの美少女ぶりには参りました。名前からして韓国系の人かな?と思っていたのですが、韓国人とロシア人とのハーフとのこと。当時14歳なので、今は大人になっています。ラストの愛が成就した幸福感は、綾取りで表されます。いつまでも連続していく共同作業。庭のベンチに座っての長い夕暮れのひと時でした。

時折現れる来訪者は、いい知らせは持ってこないようです。服を脱がせて放置していくのは、ちょっとひどいのでは…。夜は相当冷え込みます。

最後はカタストロフ。メランコリアとも同じような感覚ですが、暴力と天災は決定的に違い、こちらはいろいろ語らず、素直に解らせて、終わります。

2019.3.23 HCMC自宅にてAmazon Prime Videoよりパソコン鑑賞

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「チェチェン包囲網」 コーカサスの自然と戦争

GAYO!無料動画(最近こればっか)からの適当な1本、「チェチェン包囲網」です。題名からして戦争映画のようです。が、普通のアクション的な戦争映画というよりは、どちらかというとドラマ寄りの作品のようなので、どういうものか?と興味を持ってみてみました。感想は、ふむ、なるほど。というところでしょか。

あらすじ
泥沼化するチェチェンの攻防戦の中、ロシア軍の一隊が山で砲撃され遭難する。2人のロシア兵は本隊に戻り救出を願い出るがかなわず、捉えた若いチェチェン兵をガイドに、ルートを探ることとなる。最初は敵対同士緊迫した状況の中で時を過ごす3人だったが、厳しい山岳での生活を共に過ごす中で、また別の感情が芽生え始める…。



この話の前半三分の一は、部隊を中心に描かれています。非常に解りにくいのですが、見直してみるとこんな感じ?ロシア部隊が移動中、ゲリラの砲撃にあい孤立。2人は本隊に戻って救出を頼みますが、自力で戻れと聞き入れられません。再出発までの間に部隊の状況がいくつかエピソードで描かれます。上官の、勝手に戻って報告しろという冷たさ、部隊の女性との乱れた関係、チェチェンゲリラ側への武器の横流し(いろいろな派閥があるよう)、人質狩りの様子(これでガイドと武器を集め、武器は横流ししたり、人は捕虜交換につかったりできる?)、若い美しい男を捕まえたら上官に奪われそうになる、等々…。

戦争なので、真剣は真剣なのですが、やっていることは結構でたらめな状況の様です。チェチェン側に武器を売る時の上官の会話、酒を飲みながらしみじみとですが。
チェチェン人 「戦火の中に送り込んだ部下に同情心は?」
ロシア人上官 「感じますがなにもできない」
チェチェン人 「お前の言う通りだ」
という状況の様でした。

チェチェン包囲網

後半三分の二は、チェチェン人の捕虜をつれてのルート探索。生真面目なルバハと、お調子者のヴォフカ、それに捕虜の3人。途中いろいろと事件がありながら山を越えていきます。この山越えシーン、いいなと思ったのは。ちょうど登山の行程を辿ったような山越えになっていること。基地から、その奥の草原を経て森林地帯に入る。沢を渡った後、最奥の集落を経て、森林限界を超え岩場のトレース。そして高度を上げていく。まぁ、その上にも道がありましたので、すべて自然の中という訳にはいきませんが、なぜか懐かしさが漂いました。

途中の大きなエピソードとしては、川の渡渉時に川に落ちて逃亡を図ること、山奥の村に囚われて、リンチに処せられている同じ部隊のロシア兵を発見、捕虜交換をしようとしますが、ロシア兵は殺されてしまったこと、その夜。言葉少なながら捕虜との間にも少し会話が持たれます。土砂降りの中で、崖をよじ登っているところで、捕虜は先行し逃げたと思われましたが、ちゃんと待っていたこと。そして、最後の場面になります。他に選択肢がなかったか?その場合どうなっていたかは誰にもわかりません。

最後に、霧が晴れていく自然の風景が民謡と共に長い時間映されます。コーカサスの山々でしょうか?親しみやすい山の風景です。この映画は、ほとんど誇張もされず、ありのままを淡々と描いたような手法です。その中で微妙な心の動きを追っていくこととなる訳ですが、前半部のいかにも敵味方の間の、虚しい描写から、この小さな戦場の中の一場面を経て大自然の風景を映し出す。いかにも淡々と人間の行為の愚かさを語った映画でした。コーカサスの風景と民謡、これは、自然と人間ということが第一義かと思いますが、もう少し突っ込んでみれば、無言の中に、ここはチェチェン人の土地だということまで踏み込んでいるのかもしれません。

最後に、この映画の邦題は、「チェチェン包囲網」。キャッチコピーは、「敵陣突入! 空挺作戦敢行!」とありますが、さすがに邦題は注目をひくためには、日本では仕方がないとしても、このキャッチコピーは誇大広告ですね(笑)。原題は、「囚人」といった意味の様です。派手な戦闘アクションは無く、地味な戦場のエピソードを語った映画です。確かに、この原題だけでは日本では注目を惹くことは無理かとは思いますが…。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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