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「戦火の愚かなる英雄」 かなりの緊張感のブラックコメディ

GAYO!から手ごろな映画を選んでいて、その中で目についた映画の一つですが、若干のネット情報を観ても、あまり評判は高くないし、一部に否定的な評価もあるようで、それほど期待せずに見始めました。といっても、具体的にレビューはほとんど読んでません。インスパイアされやすい性格なもんで、自分のレビューを書き終わるまであまり読まないようにしています。2013年のルーマニア映画。フランスの名優ドバルデューが出演しています。
原題は、「A FAREWELL TO FOOLS」。ストレートに訳せば、「愚者たちとの別れ」となります。

あらすじ
ナチスの進駐するルーマニアのある村でドイツ兵が殺害される。将校は明朝5時までに犯人が出てこなければ、村人の中から権力を持つ上位10名を射殺すると宣告し、村長以下対策を練るが…



イプは、頭に銃弾を受け、知能障害を少し残しており、この村に厄介になっている立場。そして、アレックスはイプの遊び友達で、いつもナポレオンごっこを2人で楽しんでいます。そんなのどかな風景なのですが、当時ルーマニアは枢軸国側であり、ナチス軍が駐留していました。ある日アレックスの元にナチス兵がやってきて、「少しだぞ」と言ってサイドカーを運転させてもらいます。いつものことの様です。畑の中をサイドカーで走り回って戻ってみると、ナチス兵は喉を切られて死んでいました。

アレックスは、通りがかりの村人に助けを求めますが、恐れおののいて、見なかったことにしてくれと去って行ってしまい、ヘルメットとゴーグルと拳銃を取ると、サイドカーを走らせて村に戻り、アレックスは村の警察に報告しました。警察は、これは一大事と、死体を回収してナチス軍に報告しますが、帰ってきた返事は、明朝5時までに犯人が出頭しなければ、村人の中から権力を持つ上位10名を射殺すると宣告し、広場に10個の椅子を並べ、椅子に喪章をつけて去っていきました。

アレックスとイプは、いつものように2人で遊んでいます。イプの部屋で蓄音機を発見、かけると、ラ・マルセイエーズが流れ、それが聞こえると、イプは昔に戻り敬礼するのでした。また、2人は釣りに行って1メートル以上もあるナマズを吊り上げます。村に凱旋し、村人に分け与えると、皆大喜びでイプを讃えます。

この間、権力者は犯人を捕らえるのはあきらめ対策をねります。村長、神父、公証人、医者、警察、およびその妻たちです。家族も入れて10人という選択をしたようです。結果、話の筋から当然のごとくイプを犯人としてでっちあげることに。イプが村に戻ってくると、「今日は君の誕生日だ。お祝いをするから来てくれ。」と食事に誘います。誕生日なんて何のことかわからないイプは訝しがりながらも、取れた魚でスープを作って参加することにしました。

戦火の愚かなる英雄

さて、ここからこの映画の核心です。晩さん会で、まず医者が健康診断をし、余命幾ばくも無い事をつげます。そして、この困難な問題にイプの協力を求め、村の英雄としてレリーフを作るだの、最高の墓地を用意するだの、盛大な葬儀をするだの、村の広場に名前を残し、後世まで英雄として伝えるだの、いろいろと提案をし、イプは承諾します。この説得の過程の10人の身勝手な発言は結構失笑をもたらします。「私は妊娠しているのよ」と強調する奥さんとか、結構取り乱しています。イプはとうとう納得し、公証人に書類を作らせ、生前にどういうものか確認したいと、予行演習を要求します。必死の10人は村中をたたき起こし、盛大な生前葬を上げ、墓地まで運び位置を確定し、イプは掘られた穴に入って花で埋められ、やっと実感が湧き満足気でした。

これで一件落着と思いきや、イプはさらに残された自分の親類の為に、権力者の財産の譲渡を要求します。権力者の持つ一番いい土地や金銭が、イプの一族に割り当てられ、これも公証人により書類に残されました。イプはああ見えて、相当したたかなようです。満足したイプは朝の5時までにナチスに出頭し、広場に戻ることを約して席を立ちます。そして朝の5時に20分前、まだ戻ってこないイプに10人は気が気ではなくなり、内輪もめも始めますが、ここはもめても仕方がないと、ある程度覚悟を決めて、広場にでていくこととしました。

そこにナチの装甲車やバイクなどの一団がやってきて、10脚の椅子も蹴散らし、街を去っていきます。どうやらナチス軍の撤退の様です。狂喜する村人たち、そこにやってきたイプとその一族は、約束だから土地や金を渡すよう要求しますが、もはや話が違うと誰も取り合いません。落胆したイプは、広場の中心で、かつでアレックスがナチス兵から奪った拳銃で自殺しようとしますが、アレックスがその前で、ナポレオンゲームを展開します。この場面の緊張感は凄かったです。いろんな布石がこれまで撃たれていて、これを一気に回収した感じです。ナポレオンゲームの中の言葉、「生きては捕虜にならない」とイプにこの場面で言葉で言われれば、それは緊張します。素晴らしいです。

そして、ラスト、村を背にあるいているイプの手には拳銃が持たれています。どこかで自殺をするつもりでしょう。そこに、窓から外に向けて、アレックスが「ラ・マルセイエーズ」をかける。イプは思わず振り向き、敬礼をし、拳銃は手から離れます。いつものイプに戻った瞬間でした。

最後までネタバレしてしまいました。

この映画、ドバルデューがイプとして名優ぶりを発揮、ハーヴェイ・カイテルが神父としてイプの説得につとめ、のどかなルーマニアの田園で起こった一コマとして、良くまとまったいい映画だと思います。晩さん会でイプを犯人に仕立て上げる権力者10人の発言の、偽善者ぶりや滑稽さも面白いし、最後のイプが自殺しそうになるところの緊張感もなかなか大したものと思います。伏線はあまりないのですが、きっちり回収していますので、話としても大変よくまとまっています。正直、この映画は好きです。

でも、一般的に評価が高くないようです。何でかなと思って、IMDBのコメントを読んでみると、この映画リメイクなんですね。それも、ルーマニア映画の中でも名作として名高い映画をリメイクしたようです。「Atunci i-am condamnat pe toti la moarte (Then I Sentenced Them All to Death)」 という1972年のルーマニア映画です。監督は「セルジウ・ニコラエスク」。こちらは、シリアスなドラマとして作られ、今回の映画は、この原作をコメディタッチに変え、かつラストも救いがあるように改変したものらしいです。この元の映画のほうは、YouTubeで全編見ることができます。ただし、ルーマニア語、字幕はありません。ただ、見た感じストーリーは似たように進みますが、雰囲気は相当違います。したがって、この元の映画を知っている人にとっては、この映画には決していい評価は与えられないでしょう。なんとなく解ります。

それともう一つ、この映画でナチスの撤退した日が、1944年8月14日として語られていることになります。
史実としては、Wikioediaによると、
元々、ルーマニアは枢軸軍側として参戦し、ドイツ軍とともにソ連に侵攻しましたが、1944年クーデターが勃発。
8月23日 - ミハイ1世による、アントネスク逮捕により親ナチス政権崩壊。「ルーマニア国家民主連合」が全権掌握。
8月24日 - 連合国に降伏を宣言。
8月25日 - ドイツに対し宣戦布告。
という手順で動いたようです。ちょっと10日ほどずれがありますが、地域によっては物事の起こり方が違うんでしょうか?

何はともあれ、私はこの映画好きですし、1972年制作の方も、どうにかして日本語で見られないものか?と思います。

そして、最後のこの邦題なんとかもっと付けようがあるのではないでしょうか?現題の「愚か者」という言葉に込められた内容を尊重して欲しいと思います。
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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