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「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」 東京の孤独と恋

Gyao!の、キネ旬ベストテン作品特集からの鑑賞です。今回は、「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」。2017年の映画で、監督は石井裕也。キネ旬1位作品です。原作は最果タヒによる詩集です。

あらすじ
美香(石橋静河)は看護師として働き、女子寮で一人暮らしでした。仕事が終わると、夜の街を自転車で移動し、アルバイト先のガールズバーに向かいます。建設現場で働く慎二(池松壮亮)は、アパートで一人暮らし。彼は左目がほとんど見えません。現場では年上の智之(松田龍平)、中年の岩下(田中哲司)、フィリピン人のアンドルス(ポール・マグサリン)たちと、つるんでいます。ある日3人は、ガールズバーに繰り出し、智之は美香のメールアドレスをゲットしました。その後、慎二と美香は渋谷の街で偶然の出会いを繰り返します。ある日、昼休みに智之は美香とメールでデートの約束をし、立ち上がった瞬間、倒れて亡くなってしまいます。葬儀には美香も喪服でやって来ました。

ある日、仕事中に慎二は怪我をしてしまいます。治療を受け、病院の廊下を歩いていると、制服を着た美香がいました。そして、喫煙所で、慎二は美香のメールアドレスを教えてもらいます。久しぶりに実家に帰った美香は、都会の生活で抑えていた孤独が抑えられなくなり、家の外で涙を流します。一方、一人暮らしの慎二も、会いたいと美香にメールを送ります。東京の夜を歩く二人。無口な慎二に変わって美香は喋り続けました。その頃岩下は、コンビニの店員に恋していて、これからデートだと走っていきます。慎二も美香にこれから走っていくと連絡し、慎二が到着すると美香は、「女子寮だから男の人は入れません」と言うと、慎二はがっかりして戻っていきますが、翌朝、美香が窓のカーテンを開けると、外に慎二が座っていました。

ある日、慎二は美香に髪飾りをプレゼントしました。美香は何度も礼を言わずにはいられませんでした。岩下は、現場もやめ、コンビニの女の子にも振られて、去っていきました。アンドルスもフィリピンに帰ってしまいました。慎二は美香の実家を訪れ、父親から「美香をよろしく」と言われます。東京に戻ると、美香は再び不安な気持ちになりますが、そんな時、耳なれたストリートミュージシャンのデビューの宣伝カーが通り、思わず顔を見合わせます。部屋に戻った二人は、「朝起きたらおはようって言おう、ご飯を食べるときはいただきますって言おう。」と、慎二は美香の頭にそっと手を置きます。そして、夜が明けると慎二は、小さな鉢植えの花が咲いることに気づき、美香と目を見合わせるのでした。



映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ

詩集を映画化したという作品。詩集のイメージから翻案していった作品という事で、ストーリーはオリジナルに近いのではと思いました。舞台は東京。東京自体が映画化されたという雰囲気もあります。夜の渋谷や新宿の街に繰り広げられる若者たちの恋愛と悩みが描かれていました。主人公の二人とも、心になにがしか傷を持ちながら、日々を暮らしていました。二人とも孤独な生活で、常に周囲に死を感じています。美香は仕事柄ということもありますが、母の死が心に付きまとい、自分と重ね合わせているようでした。

ストリートミュージシャンの野嵜好美がいいですね。がんばーれーというのがやたら耳に残りますが、二人への応援歌のようで、これは石井監督自らの作詞との事でした。二人が恋人同士になると、アドトラックが出てきて祝福しているようでした。二人の仲は、最初は何となく付き合い始めた感じが、徐々に進展していく様子がとても良かったと思います。石橋静河が不思議な魅力を出していました。決して可愛い雰囲気ではなく、むしろ生活感があるくらいなのですが、惹きつけるようなオーラがありました。

閉ざしていた心から解放されたりとか、後ろ向きの態度から抜け出したりするという変化の瞬間をとらえた映画なのかもしれません。それが、この映画では二人の出会いであり、死に捉えられた二人がお互いを大事に思える瞬間が、少しづつ多くなっていつも相手のことを想うようになるもの。いままで斜めに見ていて気付かなかった美しさが、小さな花が咲いたのに突然気づくように、世界が変わっていきました。そして、東京はそんな人々がいつも希望と出会いを求めて生きていく町。象徴的ないい作品であったと思います。

2021.2.17 HCMC自宅にてGayo!よりのパソコン鑑賞
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「グロリアの青春」 第二の人生を過ごす新しい伴侶を求めて

きっと面白そうな映画という雰囲気を感じて見始めました。2013年の映画で、チリ・スペイン合作作品。ベルリン国際映画祭のノミネート作品となり、ヒロイン役のパウリナ・ガルシアが銀熊賞(女優賞)を受賞。その他、エキュメニカル審査員賞など独立賞も受賞しました。監督は、セバスティアン・レリオです。
原題:Gloria (2013)

あらすじ
離婚して10年が経ち、二人の息子と娘も独り立ちしたグロリア(パウリナ・ガルシア)は、老後を一人で過ごしたくないと、独身者の集まるパーティに通っていました。そこでの出会いは一夜限りで、いつも失望していましたが、ある日ロドルフォ(セルヒオ・エルナンデス)という少し年上の男性に出会います。ロドルフォは1年前に離婚し、二人の娘がいました。二人はデートを重ね、生涯の伴侶となることを意識し始めましたが、ロドルフォは、離婚した妻の間に二人の娘があり、仕送りは勿論ですが、何かあるごとにロドルフォに連絡してきて、彼自身も二人の娘は独立できず、まだ助けが必要と思っているようでした。

グロリアは、ロドルフォが所有するアミューメントパークに同行して、存分に遊びました。そして、そこにはペイントボール場もあり、グロリアも射撃を楽しみました。その後、グロリアの息子の誕生パーティーで、ロドルフォはグロリアの家族と元夫夫婦に紹介され、食事を楽しみますが、グロリアと子供たちが、元夫と昔語りに興じ、写真を撮り始めると、ロドルフォは居場所を失い、ひっそり帰宅してしまいます。この行動にしばらくグロリアは腹を立てますが、ロドルフォは和解の為に、リゾートに招待します。二人は再び関係を取り戻し、部屋に入ったところで、ロドルフォの娘から、母親が事故に遭ったので帰って来て欲しいと電話が入ります。ロドルフォは帰りたがりますが、グロリアとの関係を思い直し、愛し合います。

その後、夕食の時に、ロドルフォはすぐに戻ると言いながら、元妻の家に向かってしまったため、グロリアは失望して一人ナイトクラブで羽目を外し、酔払って男と遊びますが、翌朝グロリアはビーチで持ち物すべてを失い目を覚ましました。メイドに連絡して何とか家に戻ると、グロリアはロドルフォの家に向かい、彼の家や、出てきたロドルフォにペイントボールを乱射しました。やがて、スウェーデン人と交際して、妊娠していたグロリアの娘は、結婚式を挙げスウェーデンに向かって旅立ちます。そして、グロリアは気持ちも落ち着くと、再び出会いを求めて、ダンスフロアーへと戻って行くのでした。



グロリアの青春

まさに、同年代の映画ですね。こんなに頑張れるんだと、元気づけられるような映画でした。物語の中にもあるように、この年になるといろいろなしがらみがついて回り、体もいろいろな所が変調をきたし始め、そして、相応の年をとったことによるプライドが、いろんな悪さをする。そんなプライドが妙ないたずらをして、子供みたいに黙って帰ったりします。そのあたりの、50歳とか60歳とかの状況が、鋭い視点で描き込まれていると思いました。それはきっと二人とも同じですね。体のどこかが悪いことが共通の話題になったりします。

グロリアはそれでも前向き、信じられないような失敗をしつつも、また前を向いて生きるところに元気づけられます。人生には、死ぬまでの時間しかない。それをどう使うかは自分次第。もちろん周りの迷惑も考えてと…。そういう割り切った考え方を思い出させてくれました。ロドルフォの家にペイント弾を撃ち込むのは爽快です。相手は、見ようによっては二股をかけて不倫しているのとあまり変わりません。というか、事実上そうでしょう。おかげでひどい目にあったというのは多少逆恨みではありますが、立ち直ったので良しとしましょう。

セバスティアン・レリオ監督の映画は初めて見ますが、人物描写が面白いと思いました。オスカーを受賞したナチュラルウーマンも是非見てみたいと思いました。この映画の監督自身によるハリウッドリメイク版「Gloria Bell」は、2018年に公開されていますが、日本未公開になっているようです。予告編を見る限りは、グロリアの青春とほぼ同じ場面が多く再現されているようでした。ジュリアン・ムーアだし、そろそろ公開されるのでしょうか…。

2021.2.21 HCMC自宅にてGayo!よりのパソコン鑑賞

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「もうひとりの息子」 子供の取り違えから生まれた新たな絆

Gyao!の、キネ旬ベストテン作品特集からの鑑賞です。今回は、「もうひとりの息子」。2012年の映画で、監督はロレーヌ・レヴィ。キネ旬10位でした。東京国際映画祭の東京グランプリ及び監督賞受賞作品です。
原題:Le fils de l'autre (2012)

あらすじ
ヨセフ(ジュール・シトリュク)は、テルアビブに住むユダヤ人のシルバーグ家の息子で、軍人の父アロン(パスカル・エルベ)と、母オリット(エマニュエル・ドゥヴォス)、妹の4人家族。ある日、兵役の検査で両親との血液型の不一致が判明し、湾岸戦争で混乱する病院で取り違えられたことが判明。相手は、パレスチナ人一家のアル・ベザス家の次男のヤシン(マハディ・ザハビ)でした。ヤシンは、父のサイード(ハリファ・ナトゥール)、母のライラ(アリーン・オマリ)、長男ビラル(マフムード・シャラビ)、妹アミナの5人家族。サイードは、隠し通すつもりでしたが、その後、ヨセフには兵役取り止めの通知が届き、医大に合格してフランスから帰国したヤシンも、事実を知ることになり、二人は悲しみ悩むこととなります。

オリットの招待で、アル・ベザス家はシルバーグ家を訪問しました。ヨセフとヤシンは打ち解けますが、父親達は民族問題でいがみ合ってしまいます。ヤシンの兄のビラルもユダヤ人に激しい憎しみを持っており、ヤシンを敵と罵るようになっていきます。やがてヤシンは、アロンの手配で通行証を手に入れ、ヨセフのビーチでのバイトを手伝うようになり、商売上手なヤシンのおかげで売り上げが上がっていきました。しかし、ビラルの攻撃はますます激しくなっていきました。そして、ヨセフとヤシンは、同じ思いを持ち、自分たちを、アブラハムの2人の子、イサクとイシュマエルに例えるようになっていきます。

ある日、偶然オリットとヤシンが再開し、オリットは思わず実子のヤシンを抱き寄せます。ヨセフも一人でパレスチナのアル・ベザス家に向かい、辿り着くとライラは笑顔で迎え、精一杯もてなしました。気まずい雰囲気の中で、ヨセフは意を決して歌い出すと、その場が和み、家族みんなに歌が広がっていきました。夜、シルバーグ夫妻が迎えに訪れ、子供たちの交流の中で、親や兄弟たちも徐々に打ち解けていきます。ある夜、ビラルもテルアビブへの通行証を手に入れると、ヤシンとヨセフの3人で街を歩いていました。ところが、ならず者に絡まれ、ヨセフがナイフで刺されてしまいます。そして、病院に担ぎ込まれ治療を終えると、3人はこれからの未来に向けて新たな絆を確かめ合ったのでした。



もうひとりの息子

赤ちゃんの取り違えが、成人の頃発覚してしまうお話。その家族が、イスラエルのユダヤ人家族と、パレスチナ人家族。話は双方の複雑な立場から、混沌とした展開となっていきます。映画の印象としては厳しい話のわりに、意外とあっさりしていて、あまり深刻になっていかないような気がします。それだけに、問題点を端的に表現していると思いました。ユダヤ人家族の妹が初めて聞いた時の、「お兄さん、返すの?」というのには、正直笑ってしまいました。ストレートなんですね。むしろストレートさがいい感じです。

社会や宗教の硬直性も表現されて、深刻な問題や現状の矛盾点も十分表現されています。そして何より、父と母と子供たちは、それぞれが慣れ親しんでいく過程がだいぶ違うように描かれているところに、興味深く感じました。母親たちは同化が早く、交流へと導こうとしています。子供たちは同年代の仲間として慣れ親しんでいく形です。問題は父親たちで、なかなか適応できず、交流の進んだ家族たちに後押しされて、初めて歩み寄っていく形でした。最後は若い三人で未来志向で終わるところは、将来への希望が描かれていて良かったと思いました。

映画で描きたかったと思われること。対立からは幸福な未来は生まれず、今回は偶然のきっかけがもたらした両者の交流が、一つでも二つでも増えていくことが、両者の平和的な共存に向けての解決に繋がっていくということ。そのような現実の平和が訪れることを祈るばかりです。いろいろな問題を織り込んで、明解かつ端的に纏められたいい作品だと思いました。

2021.2.13 HCMC自宅にてGyao!よりのパソコン鑑賞

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

プロフィール

torrent13

Author:torrent13
映画は見たり見なかったりの時を過ごしてきましたが、現状ベトナム在住で、時間があるので、主にネットで見ています。昔はSF映画と、ミニシアターが好きでしたが、その後は西部劇、そして、最近では邦画や古いハリウッド映画などにも見る範囲を広げてきました。

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